カラムシ資料集その1-009/028page
裂いてY字型にした道具を使う。地面に足を伸ばして座り、苧麻の表皮の一端を足の指でつかみもう一方を手に持ち、手前の部分を竹の間に挟み、それから竹を前方に押して表皮の柔らかい部分をしごきとる。この工程の原型は、八重山などと同じだが、タイヤル族の場合には使う道具が独特だ。原住民博物館で購入したビデオを見ると、パイワン族の場合には、こうしたY字型に切り込みをつけた竹は使わないようだ。
こうしてとり出された繊維を乾かした後、米や粟のぬかにまぶしてから、川にもっていってよく洗う。それからもう一度、日にさらしてよく乾かすという。
台湾原住民の苧麻の糸づくりでは、八重山上布の糸のように細い糸が上等な糸という意識はないようで、繊維をさいて細い糸をつくることはしないようだ。
☆苧績み
つぎに、繊維の両端をつないで長い糸をつくる工程が「苧績み」である。張さんは、苧麻の繊維の束を首からかけて、そこから繊維をとって繊維の端を結んでいくやり方をしていた。
金星さんによると繊維の結び方は八重山と同じだという。
この工程はタイヤル族の中でも地域差があるのか、ビデオに出てくるタイヤル族のお婆さんは繊維を口にくわえる方法をとっていた。
☆撚りかけ
タイヤル族の場合、苧績が終わった後で糸に撚りをかける。この作業には、重しの部分に牛の骨がついた紡錘が使われる。紡錘に独楽のように回転させながら落下させ、この回転によって糸に撚りをかける。
紡錘を落下させて撚りをかけるというやり方は八重山にはない(八重山では、糸車で撚りをかける)ので、金星さんは興味深げに張さんから教わっていた。
☆かせに糸を巻く
撚りをかけた糸は、H字型のかせいに巻いて整える。
☆灰汁で煮て、川で洗う
今回の実演では見られなかったが、つぎに糸を灰汁につけて煮る。その後で、川にもって行って灰を洗いながすと、漂白されて糸が白くなる。
☆整経
機にかけられる形に整えるのが整経の工程である。台湾原住民では、何本かの木の支柱を立てておき、その間を一定パターンの運動を繰り返して、一本の糸を通していく輪状整経の方法がとられる。台湾原住民には支柱が3、4、5、6本の整経の方法があるという。張さんは、5本の支柱で整経をしていた。
☆機織り
台湾原住民の機は、いずれもいざり機で基本的に同じ構造をもつというが、ヤミ族のものは経巻具が柱などに固定されるのに対して、その他の所では経巻具に足をあてて経糸を引っ張るという違いがある。
経糸は経巻具と布巻具のところでループ状になっている。織りあがる布は、長方形の両端がつながった輪状になる。織り進むとともに、経糸を手前ひいて布の輪を回転させていく。織手の身体の幅で(ヤミ族の場合)腰から足先までの2倍くらいの長さの布が織られる。タイヤル族の機の興味深い特徴は、経巻具が空洞の木で造られていて、緯糸を緯打具で打ち込む時に共鳴していい音が出るようになっていることである。リズミカルな機織りの音が強調される仕組みになっている。
奈良曝布古今俚諺集 一部抜粋
…今按、倭文布は麻布彩文之名也、…
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