下野街道(南山通り) -048/109page
第二節 大内宿旧用水路
一、調査経緯
大内宿は重要伝統的建造物群保存地区として、保存計画におい ても、集落中央道路のほぼ真ん中にその存在が確認されている宿 駅時代の旧水路は、将来一本化し歴史的景観を少しでも旧態に近 づけるといった計画がもりこまれている。このため旧水路の復原 については、何回となく住民と話し合いが持たれていた。しかし、 旧水路の一本化は、現在の水路が明治初期に両側に振り替えられ た経緯と住民生活の利便性を考えた場合困難であるとして住民の 理解が得られず今日まで来ていた。このような中の道路整備は、 まず旧用水路の処置をどうするかという問題が浮上した。建設課、 教育委員会、地域住民の三者による話し合いが何回となくもたれ たが、結局、旧用水路は復原を見ることなく、住民は次世代に託 すとしたのである。
本事業を実施する中で、大内ダム堰堤下から大内宿間の約七五 〇m間の整備は、協議の結果、建設省の補助事業により下郷町 建設課がウオーキングトレイル事業として行うこととなった。これに先立ち教育委員会と建設課は、事業計画立案の段階から 旧用水路の遺構はそのまま保存し、道路面の整備は、埋蔵文化財 としての旧用水路に直接影響は及ばないとしても、舗装計画は恒 久的工作物の設置であることから発掘調査を行うことで協議し、 合意がなされていた。
また、当初提案された宿中央の旧道面舗装についても、以後の 協議の結果、アスファルト舗装を剥がしただけの昭和初期に戻さ れることとなった。
二、調査経過
大内宿旧用水路発掘調査は、中道構はそのまま保存し、道路面 の整備は、埋蔵文化財としての旧用水路に直接影響は及ばないと しても、舗装計画は恒久的工作物の設置であることから発掘調査 を行うことで協議していた。建設課が実施するは、計画の段階から央道路が地区住民にとっ て欠かせない自宅の進入路であることから、作業員人数と住民生 活を勘案して一工区を六五mの五工区に分け、各区間の調査日数 を二週間程度に設定した。調査体制についても下記のように組ま れ、調査に入った。
遺 跡 名 大内宿遺跡(遺跡番号 36200115) 所 在 地 南会津都下郷町大字大内宇山本地内 調査面積 813平方メートル 調査期間 平成11年8月24日〜11月18日 調査主体 下郷町教育委員会 発掘担当者 小滝利意(日本考古学協会員) 調 査 員 高橋信一(財団法人福島県文化センター) 調査指導 西間木薫(財団法人福島県文化センター) 木田寿憲(福島県教育庁文化課) 三、位置と地形
大内宿は、福島県南会津郡下郷町大字大内宇山本に所在し、会 津鉄道湯野上温泉駅から北西へ約六kmの地点に位置する。大内は かっては 「大地・おおち」 と呼ばれていたことが、伊達治家記録 の天正十八(一五九〇)年五月九日条に記載されている。下郷町大内地区は、町の北端に位置し、北を大沼郡会津高田 町・本郷町及び会津若松市、西を会津高田町、南を大字中山、東