舘岩村要覧 -007/028page
水と緑の星の、鱒沢渓谷。
たていわのゆとり空間は地球市民型
春雨。梅雨。俄雨。甘雨。長雨。涙雨。時雨。霧雨。氷雨。寒雨。豪雨。雷雨。…日本情緒をしっとりと装う雨ものがたり。その雨雪に恵まれた舘岩の大地に70余すじも彫まれた葉脈状のV字谷。独特の渓谷美の一つに鱒沢渓谷があります。その岩場は水と緑の星・地上史の謎を余すところなく物語っています。
南アフリカ原産の切り花「カラー」。オランダ人によって日本へ上陸して200年。赤かぶ、高原だいこん、山菜やきのこ、いわなややまめ、そば、りんご、トマト、りんどう、会津高原牛、木材や木工品などと共に、舘岩の特産の一つになりました。わたくしたちが出荷するのは、渓流育ちの涼風の精です。
カブトムシのオスにはツノをつけなきゃ!枯れ枝を組んで気づくのは、森の神秘の見事さです。
あらゆるものが、国境を越え、地域が日常的に海外と直結する地球化時代に向けて、確立するのは、個性と魅力ある「自分」らしさの存在感です。 *古代ギリシャでは金と鉄を10対1の割合で交換したという。鉄は農具や武器に欠かせない、文明の母であった。純度の高い鉄は銀白色で、軟らかい。これに炭素を加えると強度を加減できる。しかし、鉄を溶かす温度(1539℃)を作りだすのが大変で、1tの鋼(はがね)をつくるのに、砂鉄12t、木炭14t、薪ならその4倍を要したという。鉄分は地球の核をなす物質で、火山活動により噴出したり、地中で冷え固まったりする、火砕流や花崗岩類ではガラス質やアルミミニウムに次いで多い成分らしい。大昔は、その風化層から海砂鉄や川砂鉄、山砂鉄として採集した。火の山の山砂鉄は無尽蔵で、花崗岩塊の田代山の名称に、砂を人工の川に流して鉄分を沈澱させる鉄穴(かんな)流しという技法の跡がしのばれる。太子堂の名も、作業用の箕を作った職人仲間が信心したという研究者もいる。田代山大明神の見守る世界はミステリアス。ヒョットコも製鉄炉の火吹き男ゆかりの民俗ともされるなど、舘岩の昔語り資源は賑やかである。 たとえば、『ふくしまの水30選』の鱒沢渓谷。昔は、田植えの頃にマス、霜が降る時分にはサケが遥か日本海から2百キロ以上、銀鱗をおどらせて母なる源流の清水域をもとめて溯上したという。そのみごとな渓谷美を誇る岩肌が白っぽく映えています。
これが黒雲母花崗岩で、今から6,500万年前、それまで2億年も栄えた恐竜やアンモナイト時代末期の岩場。その頃の地球上は火山活動が盛んで、マグマ=とけている岩が地中で冷え固まったものが露出したようです。
湯ノ岐川周辺は、鮫石や米つぶ石と称される石灰質の殻で固めた岩が露出していることがあります。この化石は更に古く2〜3億5,000万年前、石炭のルーツ・大森林時代からサンゴ類が栄えた時代にかけて、世界中の海に棲んでいたフズリナ=紡錘虫。魚たちが、広がる緑の陸地にあこがれて、進化の夢をむさぼった太古の海底の地層です。
西根川周辺は火山列島・日本に典型的なグリーンタフと称する海藻混じりの緑色凝灰岩。今から1,500万年前の列島誕生時に山頂が水中に沈み、海底が尾根となった地殻変動の激しさを物語っています。たかつえは、その後の陸上火山活動による凝灰岩等の層です。
21世紀は、郷土の原風景と対話の時代。保全型から創造型へと環境づくりの発想の転換が求められる今こそ、わたくしたちは水と緑の星・地球の生態系の一員としての自覚と行動力を郷土の大地に学びます。