自然観察ガイドブック 五十人山の自然 -029/032page
カコウ岩をつくっている鉱物の種類によって、温度による膨張収縮の程度は違う。そのため長い間の温度の昇降(日射しと雨の差、昼夜の差、夏冬の差)があると、粒と粒の間がゆるんでガタガタとなる。またそのすきまに水が入り凍結すると、さらにすきまは広がる。一般には、地表に近いほど、また、全体の粒の大きさが大きいほど風化しやすいと考えられるが、同じカコウ岩でも、風化する部分とそうでない部分があり、その原因はよくわからない。建材として用いられるカコウ岩は、自然の中で一億年以上の風雪の中でも風化に耐えたものであって、おそらく今後も風化しにくいと思われる。
阿武隈山地には、広大な面積にわたりカコウ岩が分布しているが、その大部分は多少なりとも風化しており、かなりの広さと深さまで真砂となっている地域が多い。
真砂は、水を多量に含むと鉄砲水を起こすこともあり、一般に崩れやすい。平地に大きな硬いカコウ岩が鎮座していることがあるが、これは真砂となる過程でも風化しなかった部分でまわりの真砂が流れ去っても動かなかったものである。山の斜面には、これらの未風化のカコウ岩が山頂方向からズリ落ちたものが細長く堆積していることがあり、これを「岩塊流(がんかいりゅう)」という。
真砂からは磁鉄鉱(砂鉄)がとれ、これは日本古来の製鉄法である「たたら」の原料となるが、含まれている割合は少ないのでそのままでは経済的価値はない。(葛尾村で昔行われた、たたらの原料にはならなかったらしい。むしろたたらには、大量の木炭を必要とするので、阿武隈山地の豊富な林産資源を背景に営まれたものである。)