自然観察ガイドブック曰山の自然 -010/031page
10 曰山の植物放牧を止めてからは樹林が回復し、今では美 しいイヌシデの林となっている。イヌシデの ほかにミズナラ、クリ、ヤマモミジ、ウリハ ダカエデなども多い。ウリハダカエデは、緑 色の樹皮に黒の縦縞が入るのでその名がある。 林床にはヤマツツジが団塊状の茂みをつくり、 その下にクマイザサが密生している。
このイヌシデ林の中をゆっくりと下りて行 くと、やがて開けた所に出る。天王平と呼ば れる古い馬立場の跡で、オニシバの草地とな
っている。振り返ると曰山の山頂の赤い社を 望むことができる。このシバ原にも、さまざ まの秋草が咲く、オミナエジ、ヤマハハコ、 ウメバチソウ、サワヒヨドリ、ネジバナ、ア キノキリンソウ、ヤマハギなど、その種類は 多い。
尾根筋の路は再びイヌシデの林に入る。途 中、左手の斜面を移へ降りる路がが分かれる。 しばらく行くと、土塁が現れ、林が切れて視界 が開ける。この土塁の先は斜面となっており、 田沢口で見上げた茂原川口牧野組合の牧草地 になっている。かつてはここが萱場と呼ばれ る採草地になっていて、冬季の飼料である干 し草用の野草を繁殖させていた。そのため、 放牧場が入り込まないように採草地の周辺を 土塁で囲んだのである。今は、ケンタッキー フェスキューやイタリアンヤエグラスなどの 牧草が栽培され、牛が放牧されている。土塁 は、その牛が外へ逃げ出さないように、かつ て馬を入り込ませないのとは逆の機能を果し ている。
この土塁に沿って、路は最後の尾根の下り となる。行きついた鞍部から西へ車道が通じ ている。この路をたどると茂原に出る。バス に乗るためには、さらにこの先の百目木まで