大熊町民話シリーズ第3号 民話 野上川 - 001/024page

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 《第一話》

  羽黒の大蛇

喜助と嘉助は仲よしの友だちでした。二人は羽黒にマツタケ取りに行きました。しかし一しょに行ったことはありません。
マツタケの代(しろ)は親子兄弟でも教えません。まして親友でも教えられません。教えるといわれても折角ですが遠慮しますというのがキノコ取りの礼儀なのです。

マツタケは出たのを取るのでなく木の葉をかぶって見えないのを取るのです。だから代はていねいにならし他と変らないようにするのです。一日さぼって山に行かないとマツタケが地上に顔を出し他人に見つかります。そして荒されてしまいキノコは出なくなってしまいます。

喜助は羽黒に相当の代をもっていました。みんながあの山に来ないようにするにはどうしたらよいかを考えました。羽黒には大蛇がいるという話は聞きますが誰も見た人はいません。喜助は考えました。よし大蛇を造って浮かべよう。そしたら羽黒のマツタケは俺一人のものだど。

彼は器用な男でした。キノコにはまだ早い頃毎日羽黒に行って大木を伐り、蛇の頭としっぽをつけました。胴中には色をつけました。誰が見ても本物の大蛇に見えます。


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