ならはの絵馬−村人の祈り−-034/036page

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参考文献
『ふくしまの絵馬』渡辺廉芳著 ふくしま文庫1978年
『みはるの絵馬』三春教育委貞会1981年
『いわきの絵馬』いわき地方史研究会偏1980年
『図説 歴史散歩事典』 山川出版社1979年
『掲げられた祈り 八潮の絵馬』埼玉県八潮教育委員会1999年
「広報ならは 縮刷版』第2巻 楢葉町1989年
『写真でつづる 川内村史』別巻 川内村1989年
『国史大辞典』吉川弘文館
『日本風俗史事典』日本風俗史学会1979年

協力者(敬称略・順不同)
木戸八幡神社
出羽神社
広徳院
瑠璃堂(薬師堂)
北田神社
竜田神社
若宮八幡神社北野天満神社
      (合祀神社)
霧ヶ滝不動尊堂
稲荷神社(波倉)
八幡神社(上繁岡)
大楽院
根本直記
松本文男
菊地宮美子
立石不動尊堂

あとがき
 本書は、平成11年度企画展「ならはの絵馬−村人の祈り−」の図録と絵馬調査報告書を兼ねた刊行物です。昭和51年、当時町 文化財調査委員だった菊地富美子氏の協力によって第1回目の絵馬調査が行われました。続いて昭和54年には町史編纂事業の一 環として編纂事務局で町内の寺社堂を調査し、平成9年になって絵馬の町指定問題から再び調査をすることになり、計3回の調 査をする機会がありました。
 昭和61年7月に開館以来、毎年民俗、文化財などの各種調査を行って企画展事業を進めてきましたが、今年は調査活動のうち から蓄積がある絵馬を事業に取り上げました。絵馬は、馬を神に献上するかわりに、板などに馬の絵を措いて奉納したのが始 まりと言われ、奈良時代頃からはじまったといいます。その時代の世相を反映した絵が描かれており、村人の祈りを読み取る ことができます。
 絵馬が奉納されている寺院堂は11カ所で絵馬・句額・算額・奉剣額など100点を確認しました。奉納者は必ずしも地元の人と は限らず、近隣の村や他県からの信仰も見られました。大発見になったのは、木戸八幡神社の元禄9年(1696)の「松に鷹図」 は色彩も素晴らしく福島県の絵馬に登録されていて、町内で最も古いとされてきましたが、今まで年不明だった「鷹図」縦 47×横30が、返却のため当神社の絵馬堂に運んだ時、偶然にも西日が当たり年号の墨の部分が盛り上って影となって「貞享三 年十一月」と読むことができて、元禄9年より10年も古いものとわかったことです。また当神社の明治21年(1888)奉納「長寿 全図」は二面が一対になっていて、当時の敬老会の様子を克明に描いた縦108cm×横143.7cmの大絵馬で見事なものです。最も 大きいものは今回は展示出来なかったが、霧ヶ滝不動尊堂の明治43年奉納の「生産国」は縦150cm、横200cmのもので、炭焼 きと木端作りの様子が措かれた貴重なものです。珍しいものでは立石不動尊堂に奉納されている「鯉の背に乗る中国老人国」 は、木製で浮き彫りにした図柄を貼った立体的な手法のものです。又広徳院の「母子図」は絵師は不明だが、繊細な筆遣い、 構図により子どもに囲まれたほのぼのとした情景が感じとられ、祈願絵馬にふさわしい絵柄は、美術的にも価値が高いもので す。町内の絵馬には、武者図・動植物・記念図・物語図・算額・俳句和歌額・宝剣額など多種に及び絵師の出現もあり美術的 にも優れたものが多く貴重な歴史的・民俗的資料であります。
 展示の計画にあたりいささかの不安がありました。それは奉納されている場所が寺社堂の梁に掲げられ、釘づけしてあり門 外不出での貴重な信仰の遺産を貸して下さるかどうかでした。しかし、今回展示した所有者の皆さんの特段のご理解と協力に よって搬出するゆるしを得ることができました。もう一つは展示場所です。資料館の構造上、常設展示室以外は空調と警備が 整っていないことです。当館は企画展示室がないため、空調・警備のできない狭いエントランスホールで毎年展示事業を行っ てきましたので、どうしたものかと思案の末、期間を一週間にし、常設展示室内をパネルボードで囲みそこに展示することに しました。お蔭様で大小30点の絵馬を一堂に展示することができました。今後二度とこのような企画展はできないものと思い ます。本当にご協力いただきました皆様に、心から感謝を申し上げます。

楢葉町歴史資料館


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