須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -065/113page

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1 剃髪(ていはつ)章

 剃髪(ていはつ)章
  深草に庵(いおり)しめたる
   人まねにはあらて
元結の霜掃すてゝ待や雪   萬 楚
  其 引
寒にも見違られな其天窓(あたま)   存 義
亦(また)ひとり頭巾(ずきん)仲間や冬籠(ふゆごもり)   買 明
そり捨て安き寐臥(ねぶし)や冬籠   葵 足
 
髪置にそる身の上もおかしさよ   小 知
  萬楚とし頃風流に遊ふの
  欲にあまり我輩に
  かたちをうつしものする事を
霜月やそれもあるへき頭巾親   常 仙
 安永乙未年冬十一月
 

2 終日春曙亭にあそふ

 終日春曙亭にあそふ
きさらきや温酎尽ぬ軒の梅   佛 仙
さくら饌(そなえ)る枕の函(はこ)出   其 白
目覚しに角の落たる鹿撫(なで)て   露 秀
かた脛(すね)もたけ鶴伸にけり   州 化
我門田水を湛(たたえ)て暮の月   露 滴
秋の尾上(おのえ)にしら雲の花   阡 宣
  末 略
 安永八亥のとし 印 印  
 

3 みちのく須加川連新春賀摺

小みちかき日向(ひなた)は
もてと庵(いお)の梅
   なといまた
    させる物も
      ひろ(ママ)い
        不申候
  金令(花押)
 
   こははやくも聞へし春色の
   うるはしけれはまつ文台の
   はしめにかひつ暮ける
聞なれた鶏か鳴なり朝霞(かすみ)   多代女
とりつきの家の梅咲く小坂哉(かな)   桐 宇
明るやら星の落込柳原   素 幽
花すみれ大きな家の古りにけり   其 水
時めくやまつ蛤(はまぐり)のふり胡椒(こしょう)   士 篤
朝日さす戸は三尺の雉子(きぎす)声   圓 子
菜の花は寐(ね)て見る程もなかりけり   杉 居
梅柳やたら見て来て門の月   蘭 路
すき服に白湯(さゆ)呑む庵の梅見哉(かな)   蔦 丸
松もはや朧(おぼろ)をつくれ宵の雨   旧 文字
乗掛のほくりかくりと山笑ふ   雨 考
 葵酉の春 みちのく須加川連
  印

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