4 晴霞庵建立披露賀摺 |
椎(しい)の木ならぬ藤の一もとを頼み垣根 |
結添なとしていさ、かの庵をむすひぬ |
かくて花とりに情をこらし梢(こずえ)の月峯(みね)の曙に |
身をゆたねんとの心はへにはあらす只(ただ)世の |
業をわすれんとするのみなりはた何とか |
名のなきにしもあらすと松窓(しょうそう)の翁に額を |
乞けれは絢(けん)を払て頓(やが)て晴霞(せいか)の二字を得たり |
菊植える迄をことしの出来こゝろ |
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多代女 |
十日十日の雨も長閑(のどか)に |
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雨 考 |
山水のみとりに鷺(さぎ)の道つけて |
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代 |
見ゆる限りをしるよしにせん |
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考 |
杯もはしめてすゝしくれの月 |
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代 |
秋をよろこふ薄柿の衣 |
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考 |
下略 |
老ても春はうれしく |
飯蛸(いいだこ)のめしより多し遊ふ事 |
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松 窗 |
うめ柳これは娵(よめ)の田姑(しゅうと)の田 |
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且 々 |
作寺や椿いくらの春を見し |
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きよ女 |
春はもののうれしき空に雪の散 |
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太 呂 |
はるの水十里流れて鶴見橋 |
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夢 南 |
海山のみとりにつゝけ我文も |
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柴 山 |
蓋(ふた)あけて広沢覗(ひろさわのぞ)く田にし哉(かな) |
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梅 價 |
寒いにもこゝろのよるや梅の花 |
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碓 令 |
とりついた意地にも似ぬや藤の華 |
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金 令 |
晴霞の夜遊 |
花の香や灯(ともしび)に手をかさす時 |
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雨 考 |
古池は持たてもきくやはつ蛙(かわず) |
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旧 |
先うれしけふをはつ花初月夜 |
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士 篤 |
降雨のよるも冨けりきく蛙(かわず) |
淡水改 |
素 龍 |
大熊川は目の果に白し |
柴舟の来る水上のさくら哉(かな) |
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玩 二 |
流れ来よ遠山さくらけふを専(もっぱら)に |
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圓 之 |
一樹を根こして |
月に日に長かれとこの柳かな |
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蘭 路 |
なこその石を贈りて |
いつまても花さくこゝろさくら石 |
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東 翠 |
母の新荘にて |
人の来る栞(しおり)に蒔(まか)ん蔦(つた)の種 |
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子 介 |
人々を招て廿八夜も曙ちかき頃 |
朔日(ついたち)もまた来ぬ空をほとゝきす |
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多代女 |
文化戌寅春 |
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5 三人句摺
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京に似ぬ山をはしめに京の花 |
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大 癡 |
さしのほす舟や桜の有かきり |
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桃 児 |
筋違(すじか)ふて花に茅花(つばな)の散こゝろ |
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宜 麦 |
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6 歳旦摺
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楢橿(ならかし)に伸てのほれる初日哉(かな) |
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石川の音に戻れりおほろ月 |
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子供等の中へ這入(はい)らん年忘 |
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戌の年 |
七十四叟 |
宜 麦 |