須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -066/113page

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4 晴霞庵建立披露賀摺

  椎(しい)の木ならぬ藤の一もとを頼み垣根
  結添なとしていさ、かの庵をむすひぬ
  かくて花とりに情をこらし梢(こずえ)の月峯(みね)の曙に
  身をゆたねんとの心はへにはあらす只(ただ)世の
  業をわすれんとするのみなりはた何とか
  名のなきにしもあらすと松窓(しょうそう)の翁に額を
  乞けれは絢(けん)を払て頓(やが)て晴霞(せいか)の二字を得たり
菊植える迄をことしの出来こゝろ   多代女
 十日十日の雨も長閑(のどか)に   雨 考
山水のみとりに鷺(さぎ)の道つけて  
 見ゆる限りをしるよしにせん  
杯もはしめてすゝしくれの月  
 秋をよろこふ薄柿の衣  
   下略
    老ても春はうれしく
飯蛸(いいだこ)のめしより多し遊ふ事   松 窗
うめ柳これは娵(よめ)の田姑(しゅうと)の田   且 々
作寺や椿いくらの春を見し   きよ女
春はもののうれしき空に雪の散   太 呂
はるの水十里流れて鶴見橋   夢 南
海山のみとりにつゝけ我文も   柴 山
蓋(ふた)あけて広沢覗(ひろさわのぞ)く田にし哉(かな)   梅 價
寒いにもこゝろのよるや梅の花   碓 令
とりついた意地にも似ぬや藤の華   金 令
    晴霞の夜遊
花の香や灯(ともしび)に手をかさす時   雨 考
古池は持たてもきくやはつ蛙(かわず)   旧 文字
先うれしけふをはつ花初月夜   士 篤
降雨のよるも冨けりきく蛙(かわず) 淡水改 素 龍
    大熊川は目の果に白し
柴舟の来る水上のさくら哉(かな)   玩 二
流れ来よ遠山さくらけふを専(もっぱら)に   圓 之
    一樹を根こして
月に日に長かれとこの柳かな   蘭 路
    なこその石を贈りて
いつまても花さくこゝろさくら石   東 翠
    母の新荘にて
人の来る栞(しおり)に蒔(まか)ん蔦(つた)の種   子 介
    人々を招て廿八夜も曙ちかき頃
朔日(ついたち)もまた来ぬ空をほとゝきす   多代女
 文化戌寅春
 

5 三人句摺

京に似ぬ山をはしめに京の花   大 癡
さしのほす舟や桜の有かきり   桃 児
筋違(すじか)ふて花に茅花(つばな)の散こゝろ   宜 麦
 

6 歳旦摺

   
楢橿(ならかし)に伸てのほれる初日哉(かな)    
石川の音に戻れりおほろ月    
子供等の中へ這入(はい)らん年忘    
 戌の年 七十四叟  宜 麦

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