須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -108/113page

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39 新春賀摺

山水も春の香のして空高し   抱 鶴
野のはるやこんな家にも生肴(さかな)   令 甫
物の香のたち量るか朧(おぼろ)月   青 路
はるよ春心に持たぬ貧なれは   恵 甫
紅梅やきたなくなりしうめの中   路 生
春めくやよし野あたりをふる小雨   國 草
鶯(うぐいす)のはらにたもたぬ雫哉(しずくかな)   呂 斎
をめをめと鳶(とび)の吹かるゝ余寒哉(かな)   文字 歩
身ひとつをわれとなくさめて春の雨   老 甫
笑ふ事はいくつもほしや梅の花   鹿 阿
春のえむ音や朧(おぼろ)の宵の程   古 雀
  (下段)    
うくひすの不足顔なる曇りかな   国 杖
正月の山もこほるゝ木の葉哉(かな)   笠 我
てふの羽の朝からかろき日和哉(かな)   蘭 雨
来る人の来もせて梅の盛哉(かな)   柳 坡
はるかせや海の方から夜の明る 少年 蝶 舞
おほろなるはしめか水のひた烟(けむ)る 加津衣
鳥の吸ふ程はつゆ持てはるの草   適 甫
野やしきのそれか境か夕かすみ   圀 甫
 

40 新春賀摺

うくひすの間々や滝の音   玉 光
住馴(なれ)し甲斐(かい)も有けり梅の花   白 林
向はんとすれは鏡に柳かな   乙 也
鶯(うぐいす)の声のもとかし藪(やぶ)の奥   春 水
元日の心は花の莟(つぼみ)かな   花 流
若水に古きもおかし釣瓶縄(つるべなわ)   船 志
朝々は知る人はかり門柳   机 文
むた足と思ふて来れは梅の花   寒 水
呼声もつやの有けり白魚売   ひさ女
梅かゝや旅のはなしは尽ぬもの   一 雅
 
文字(ほうらい)の山つゝき也(なり)夜着の袖(そで)   謝 堂
 

41 出嘩鼾の図

 出嘩鼾(でばないびき)の図
蚊のせゝる寐覚(ねざめ)もひとつ旅日記
 ころころと
  后(あと)に書たそ   乙 二
     鼾(いびき)の図
破れむと
  思ふ紙帳(しちょう)のいひきかな   且 々
 

42 歳旦摺

元日や障(さわ)るものなき岸の波
梅か香や鳴子付たる離れ木戸
行としを惜みて斯(かく)す姿かな
  四世 桃 隣
 

43 良夜湖辺に遊ひて

むしの声白地(あからさま)なりけふの月   三千丈
 良夜湖辺(りょうやこへん)に遊ひて
行水に露おく月の真っ昼や   丈 左
 

44 文郷、秋守二人句摺

 曙を袖(そで)に   文 郷
   うけるや
     芹(せり)の水
 
 かみしめ様
  筆のうらにも
       余寒かな
 
 三日つきの   秋 守
   そりにひるむな
       はるの草

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