須賀川市立博物館図録 俳諧摺 上 -107/113page

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38 新年摺

初鶏や草の戸をすく焚(たく)明り   素 屋
雪にさす影もうるはし門かさり   松 圃
理屈なき処々(ところどころ)やうめ若菜   麦 鳥
あらためて来て笑顔する札者かな   宗 樹
正月に成て奇麗な寒さかな   素 山
とめとなく転ふ手まりや長廊下   江 三
大福(おおふく)やひと日忘れぬ朝こゝろ   文 窓
楪(ゆずりは)やさなから青きうらおもて   茶 雷
洞床(ほらどこ)へまはる日かけや福寿草   梅 通
 
一はたけ向ふのを摘むわか菜哉(かな)   卓 郎
明たれと灯(ひ)もにきはして初雑煮   等 栽
年々の尊さはこのはつ日かな   布 山
元日は只居てはやき日暮かな   河 暁
峰々にさはる雲なし四方(よも)の春   北 梅
人も来てしつかや奥は筆はしめ   古 友
隣とはちかくて遠き年始かな   留 我
盛りたてる雑煮にくもるともし哉(かな)   挙 一
元日や頭巾(ずきん)はかりは去年(こぞ)のまゝ   琴 賀
子(ね)の日野の雪に終おと扇かな   曲 川
松島へひとすち道や御代(みよ)の春   乙 也
元日や不断の人を人の見る   季 成
御降(おさがり)はこほるゝと見て晴にけり   棹 舟
喰(くい)つみをすゝめののそくあした哉(かな)   蒼 湖
あら海やきのふにかはる初みそら   橘 外
初空や柳まて来て眼にさはる   古 谷
新らしいもの着て寒しけさの春   静 夫
元日やきのふには似ぬ起こゝろ   盤 齋
文字(ほうらい)やまわれはもとのおき処(ところ)   井 雨
坐(ざ)を引て居れはまた来る礼者かな   未 貫
人の日や朝の間に済む門掃除   静 渕
みな春になれし四日の往来(ゆきき)かな   史 山
岩をこす波のしろさや初かすみ   潮 堂
撰(えり)わける若菜に雪のしつくかな   万久住
福寿草このうへにさへあるほこり   兎 國
洲(す)の鳥もむき直りけり初日の出   碧 水
年のうそいへぬ白髪(しらが)や君か春   右 橘
足もとの闇(やみ)ははなれて初からす   習 静
遣(や)り羽子やはつむも人のこゝろより   靖 路
みしかきもおとらす咲や福寿草   其 宜
初空になる間や起てやゝしはし   素 心
吹風のゆるみこゝろや去年(こぞ)ことし   峰 秀
春立てはや暮ゆとる日あしかな   草 尺
はる立や雲も霞(かすみ)とまかふ朝   普 陽
何時としらす遊ふや花のはる   世 員
うつくしき物のはしめやかさり海老(えび)   雨 来
人の手にかけぬしまりや福寿草   東 郊
年寄れとおもふ人なし花の春   文字 路
鍬(くわ)初にゆく人みゆる堤かな   百 旨
福引に人の波うつ襖(ふすま)かな   泉 舎
松高ふなるや入江の初日かけ   芦 城
元日の光もちけりこほれ水   鳥 岳
やり羽子もかしこうみゆる相撲哉(かな)   草 友
引かへて出すよ屠蘇(とそ)てはない銚子(ちょうし)   羽 人
子の行儀教へはせねと宿の春   壱 岐
橙(だいだい)やころかる外に芸のなき   醉 雨
年中の鏡のふたや懸想文(けそうぶみ)   諸 岳
あたるには間のあるやうそ初日影   嵐 文
若水に明ほのゝ花咲にけり   文 起
文字(ほうらい)の傍(そば)に似合し老夫婦   杜 水
喰つみや朝々直す海老(えび)のむき   奇 泉
ほとよきは人の花なりとその醉   木 和
元日やはなれてすはるはしら際   市 猿
日ぬくみに椽(えん)のぬれけり若菜籠(かご)   甘 志
明行や霜の花さく松かさり   貫 乎
名によつてものは愛度(めでたき)若菜かな   茶 山
屠蘇(とそ)の香や組さかつきの上ひとつ   帆 道
冬からも野ては見たれと初からす   有 節
 
ひとゝせの思案しそめる二日かな   九 峰

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