須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -086/100page

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ひはり鳴嵯峨の宿屋の朝寝かな   竹涯
春雨や懸かへて見る古懐紙   其齢
門松やとしとしなから枝しけみ   可翠
老しらぬ眼に見付たりはつ霞   小萍
わか水や土器(かわらけ)ぬらす其にほひ   左城
ともすれは眠気さしけり二日風呂   棠枝
先無事な顔にしむ也はつ手水   採芝
新年や雪掃た手を膝のうへ   荷庵
しつかさや雪のあと降春の雨   可洗
長閑さや山より船の数をよむ   鴎渚
窓向て一二輪さくつはきかな   凍雲
みな人のかしこく見えてとしの朝   一電
橋のある足おともして梅の中   柳南
春は先黄鳥にあり花屋敷   芳林
人声を誘ひ出してや初からす   瓜蝶
川添は柳に深い朝けふり   厚年
老の手にけふは引れよ姫小松   梅堂
とち向てかをりをほめん梅林   景 
はつ鶏にはや動きけり人こゝろ   三苟
雪の道ふみおほえけり初若菜   嘯月
わか水にはやうつり鳧梅柳   松石
書初やいのちも長き筆撰て   二道
押なへて正月になる柳かな 八十六齢 素陽
としの花咲かせて雪は晴にけり   羽洲
  明治三十一年    
     

77 新年摺

   
嗽(うがい)する流れにもさす初日かな   可祝
出て見れは杖先軽し初霞   松華
賑やかな礼者来にけり小昼過   半窗
掃初の塵となりけり熨斗松葉   如雲
海山の声もへたてす初からす   朴齋
人まして水ます年のはしめ哉   隣風
道のある限りは梅と柳かな   桧山
おもしろい用はかりなり松の内   貞亮
はつ空や都もちかく思はるゝ   ゆかり女
万代のいはほも年のあした哉   米甫
太々とちさい児の手に筆始め   素節
門松の左右へ広かる下枝哉   青荷
見れは日も伸てありけりはつ暦   北外
稀に聞くやうにまたれて初烏   文視
空の色水底に引く田芹哉   雪窗
量りなき福寿の海や初硯   佳山
文字の似あはぬ家はなかりけり   清聴
  喜字米寿の賀を羨みて    
迎ふとし六十六も祝ひかな   壮山
寄り易き家の門なり梅柳   同 
  明治三十一年第一月   松琳書印    

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