須賀川市立博物館図録 俳諧摺 下 -087/100page

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78 新年摺

   
はしめから咲ふりつよし梅の花   幹雄
一先は神代心や屠蘇の酔   長至
言の葉の上に咲けり年の花   方雄
定まらぬ名も若草の匂ひ哉   千宝
真直に年立朝のけふり哉   青樹
年立や千門万戸まつのかけ   一真
梅咲や氷の上をすめる風   山湖
異国へも日本の七五三(しめ)の手際哉   月湖
元日や孫に問はるゝ老の年   鹿街
富士のゆきふむかと見へぬ奴凧 九才五月 琴齋
よき事の笑ひはしめや屠蘇の酔   山静
袴さへとけはくれけり松の内   世外
梅一木添ても見たし松かさり   蓬生
春の日や田守か家に立けふり   豊哉
一年せは今日にありたし日の始   一義
毎事(ことごと)も此こゝろて居たし今朝の春   孤窓
書初や習ふに慣る師の教ひ   奇楽
楽しさや山家の春は花に鳥   ふみまと
元日や同う日なから月なから   小竹
との家も笑ひ声あり松の内   硯静
常に来る人もたゝしき御慶哉   竹友
身振りまて改まりけり松の内   清漣
明らかに治まる家や屠蘇きけん   芳翠
四海波やう治まりて御慶かな   可楽
花と書字に力あり筆はしめ   素月
いさ出て力ためさん小松ひき   文字
若水に長き瀬を汲む山家かな   静子
餅はらに餅しひらるゝ御慶哉   萬山
鶯の一月ふりを籠の声   寛娯
常盤木は老の寂なり謡初   智泉
福引の得物やのちも笑ひ種   つたへ女
鶏鳴てふり分にけり去年今年   露夕
陽炎に笑ふやうなり鬼瓦   翠堂
柳から先伸々し心哉   竹雄
初夢や明て又見る不二の山   しくれ
寝をしむや梅の月夜の寒からす   湧水
梅もあり柳も見ゆる恵方哉   山麗
 三十二年春の日楼上の南窓を    
 開らき関楓菴のあるし    
 つたなき筆を染  印 印    
     

79 新年摺

   
月朧一節切(ひとよぎり)ふく痩男(やせおとこ) 八十一叟 永機
若餅の杵も今年のはつみ哉   機一
小利口なものなり梅に結ひのし   千畝
屠蘇の香や色濃く見ゆる老の髭   菊外
昼酒や酔て稲つむ片心   楓涯
遠山の松を心の恵方かな   芳逕
梅咲やこんな藁家も誉らるゝ   孤山
鶯の来て春めかす庵りかな   實阿
はつ春や神酒ひと口の酔心   雨静
たよはくも歌の力や小松曳 七十五叟 伯志
門松や七十一齢の空を見る   茶来
太刀と反り弓と曲りて小殿原   三祥
寝て待し果報の春か来りけり 七十九叟 其邦
餅腹のあとを白魚のめさし哉   竹夫
人の日やなれと名残の遊ひ事   笑波
門々の福藁匂ふ朝日かな   福司
我海は広し初日の出所まて   翠山
花活に水さす時や去年今年   月舟
万代に結目かたしのし昆布   窗風
用済や一風呂入れは初鴉(はつからす)   稲波
本膳に丁稚(でっち)の並ふ雑煮哉   月川
大海や曇らぬ御代の初日かけ   菱坡
いさきよくふむや恵方の神の庭   春山
門松や雀も朝の鳥らしき   壽存
文字や昔の見ゆる床かさり   夫明
笏(しゃく)の手に揃ふや門の七五三かさり   其峰

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