機関誌第3号「AMFNEWS」 -002/008page

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AMF MARINE SCIENCE
海洋の科学

サンマの飼育と展示T

飼育困難生物実験施設
飼育困難生物実験施設

 ふくしま海洋科学館は、平成6年度に基本構想、翌年に基本計画が策定されました。日本全国には、現在66館の水族館がありますが、この施設をつくるにあたり、私たちはどのようにして特色のある展示をつくるかを検討しました。

 その結果、他の水族館で見ることのできない飼育の難しい生物に挑戦し、その成果を展示に反映することにしました。

 飼育の難しい生物はたくさんありますが、特に外洋性および深海性生物の飼育技術開発を精力的に行うこととし、この外洋性生物の研究対象の候補の一つにサンマがあげられました。

 サンマは太平洋側では暖かい黒潮海域で産卵します。そして稚魚は黒潮に乗って北上し、ついには親潮海域に到達します。親潮海域は水温は低いものの、エサとなる動物プランクトンが豊富です。ここでたっぷりとエサを食べて成長したサンマは、今度は産卵のために黒潮海域を目指して南下します。この時に通過する親潮と黒潮の潮境、「潮目の海」が漁場になります。つまりサンマは黒潮と親潮の両方を生活の場とし、更に潮目の海がヒトとの関わり、つまり漁場となり、当館の展示テーマ 『黒潮と親潮のであい〜潮目の海』 によく合致した魚といえます。

 また小名浜は全国でも有数のサンマ水揚げ量を誇り、地元の魚としても重要です。

水族館で見ることのできなかったサンマ

 水族館におけるサンマの飼育研究は、1990年に松島水族館 (宮城県) で行われ、日本動物園水族館雑誌にその結果が報告されています。この他にもいくつかの水族館で飼育を試みた例がありますが、いずれも予備飼育施設で飼育、またはイワシの群れに混ぜて飼育をしたなどで、本格的にサンマ展示を行ったというわけではありません。

 サンマは北太平洋に広く分布しており、日本近海では沖縄県以北、日本海を含めて各地で漁獲されています。それでは、なぜ今までサンマは水族館で展示されなかったのでしょうか。この理由は大きく分けると三つあります。

一つは網ですくったり、手で触れたりするだけでウロコが取れてしまうことです。サンマはウロコの無い魚だと思っている人も多いと思いますが、これは漁獲時にほとんど落ちてしまうからです。このような理由から、サンマをどのように採集して輸送するかが大きな問題になります。

二つ目はたいへん神経質な魚であることです。カツオやマグロ類、遊泳性のサメやエイ類、マンボウなどの外洋性の魚は、泳いでいないと呼吸ができない、小回りが効かずに水槽の壁に衝突するなど、水槽という限られた空間(水間)で生活することが苦手です。サンマも例外ではなく、光や音(振動)に敏感に反応して水面からジャンプして飛び出したり、水槽壁面に衝突したりします。サンマを海で採集できたとしても、狭い船の上でどのような水槽に入れて輸送するか、水族館の水槽では、どうすれば落ちついた状態で飼育できるか等、たくさんの課題があります。

三つ目は寿命が短いことです。サンマは水産上重要な魚ですから資源量をはじめとする研究は戦前より行われていました。しかし外洋性魚類であるがゆえに研究しにくく、回遊経路、寿命、産卵数など解明されていない点が多いといいます。

寿命については1年、1.5年、2年説があり、現在では1年説が支持されているようですが、いずれも短命であることは事実です。つまり、夏から秋に漁獲される大き

サンマ


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