機関誌第4号「AMFNEWS」 -001/007page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

AMF MARINE SCIENCE
海洋の科学

サンマの飼育と展示 II

Breeding and Exhibit of Pacific Saury,Cololabis saira,by jun Tsuzaki

流れ藻の採集 
▲流れ藻の採集
 collecting floatingseaweeds

船上にて流れ藻からサンマ卵を探す
▲船上にて流れ藻からサンマ卵を探す
sampling eggs of saury on the boat

孵化直後の稚魚
孵化直後の稚魚 larvae of the saury hatched out

 平成9年3月に高知県で採集した全長5cmのサンマ椎魚は順調に成長し、7月に全長25cmを越えました。そして世界で初めて飼育下で産卵し、2世が誕生したことは前号でお伝えしました。

 水槽内でサンマが自然産卵したということは、サンマを飼育する環境がある程度整ったということの証です。しかしこれは、全長5cmの稚魚から成魚に育成できたということで、一番飼育の難しい孵化したばかりの稚魚の飼育方法を確立したというわけではありません。

 世界初のサンマ2世を育成する技術は実はその1ヶ月前に小名浜沖で採集したサンマ卵を孵化させて飼育実験した成果を生かしたものなのです。

小名浜沖でのサンマ卵採集

 私たちは、サンマを水槽内繁殖させて累代飼育した魚を周年展示することを目標としていましたが、それが成功するまでは毎年どこかでサンマを採集しなければなりません。高知県におけるサンマ椎魚の採集は、確実に一定数を入手できるわけではないため、次にサンマの卵を採集する方法を考えました。もしサンマの卵を採集できれば、魚体を傷つけることなく輸送できますし、稚魚よりも大量に収集することも可能になります。

サンマの卵を探す

 サンマは秋から初夏にかけて日本近海のどこかで産卵しています。大きく分けると秋に茨城県沖、冬は九州南方、春から初夏にかけて東北地方の太平洋側で産卵しています。卵は磯に生えているホンダワラなどの海藻類が千切れて波間を漂っている「流れ藻」に産みつける習性があります。

 サンマに関する文献を調べると、小名浜近海でサンマが産卵する時期は、5月下旬から7月上旬にかけての水温15℃以上の海域だということがわかりました。

 平成9年6月〜7月、福島県水産試験場が毎週発行している海況速報を参考にして、水温15℃〜17℃付近を調査することにしました。

船上作業

 採集は遊漁船や漁船をチャーターして行いましたが、事前に船主に目的や方法を十分に説明し、どこに流れ藻があるのか、情報を収集してもらいました。

 船の上では目を皿のようにして流れ藻を探し、発見すると長い柄のついたタモ網やフックを使って引き上げます。大きな流れ藻は畳8枚程の大きさがあり、引き上げるのに苦労しました。しかしサンマは流れ藻の大きさには関係なく産卵していました。船の上で流れ藻を探す時は、海鳥がたくさんいる場所を目印にするとよいこともわかりました。

 船上に引き上げた流れ藻は、サンマ卵がついているかどうかを手際よく探し、卵のついた海藻だけをハサミで切り取りバケツに収容します。平成9年は2回の調査で約3000粒のサンマ卵を採集することができました。

 この年の調査では、サンマ卵だけではなく、ウスメバルの稚魚やサヨリ卵のおまけまでついていて大成功に終わりました。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権はふくしま海洋科学館に帰属します。
ふくしま海洋科学館の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。