機関誌第4号「AMFNEWS」 -002/007page

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流れ藻に付着したサンマ卵
▲流れ藻に付着したサンマ卵
 seaweed with eggs

 サンマ卵の管理

 実験施設に搬入した流れ藻は、卵の付着していない余分な海藻が腐って水質を悪化させないように、不必要な部分をカッ卜して100l孵化水槽に入れ、エアーレーションしながら管理しました。
水温は採集した海域の水温を参考に16〜18℃としました。サンマの卵は長径1.72mm、短径1.65mm、無色透明で長い糸が付き、これで流れ藻にからんでいます。
卵の中に稚魚の体ができあがってくると、体の色素が発達して青く見えるようになります。
サヨリの卵もよく似た形状をしていますが、黄色がかっているので、慣れれば一目で区別できます。採集した卵は、発生がかなり進んでいて、搬入後5日目より孵化し始めました。

 サンマの稚魚の育成

 サンマの孵化稚魚

 孵化したての稚魚は全長が6〜7mm、頭を上にして、水面付近をフラフラしていますが、半日も経つとしっかりと泳ぐようになります。
稚魚の色は親魚と同じで背中側が濃い青、腹側は銀色をしています。孵化した稚魚の一部に頭の部分が白色の個体も現れましたが、二日程すると他の個体と同じように青黒くなりました。
稚魚は孵化して遊泳が安定する頃から餌を食べるようになります。

 多くの魚類の孵化直後の稚魚は、ヒレが未発達で泳ぐことはできません。
また口は開かず、腹についている卵黄の栄養を吸収してしばらく育ちます。体は色素が未発達でほとんど透明をしています。

 しかしサンマの孵化稚魚は色素やヒレ、口が親魚と同じように発達し、すぐに餌を食べるなど、完成した身体をもっています。

 稚魚の飼育

帰化水槽
▲帰化水槽(100l)
 breedingtankforhatching

 孵化したサンマ稚魚は孵化水槽から30lの容器に移し、水温を18〜20℃で飼育しました。餌料はワムシを孵化後1〜5日間、ブラインシュリンプを孵化後三日目より給餌しました。サンマは稚魚、成魚ともに水面付近のエサを食べます。

 サンマ稚魚は水面を遊泳するのが普通ですが、飼育容器では壁面に頭をつけて泳ぎ続けるのが観察されました。
このままだと餌を食べられずに体力を消耗してしまったり、吻端部(口)を損傷する恐れがあるため原因の究明に全力を注いだところ、室内の照明が水槽壁面に反射し、それに反応していることがわかりました。
対策として容器の色を黒色にし、水面上に暗幕を取り付け、容器の中央に照明を設置したところ安定した遊泳をするようになりました。

 稚魚の飼育

サンマ稚魚の育成水槽(1t)
▲サンマ稚魚の育成水槽(1t)
 breeding tank for layvae with shade

 サンマ稚魚は30l水槽で約一ヶ月程飼育して全長2cmに達した時点で1t水槽に移動しました。この水槽ではブラインシュリンプの他にも粉末の配合餌料も与えました。
そして全長五cmに成長すると稚魚を30t円形水槽に移動しました。30t円形水槽では配合餌料の他にアサリ、アジ、アミを口の大きさに合わせてミンチにして与えました。

 飼育しているサンマ稚魚は、孵化水槽から30l容器、次に1t水槽、最後に30l水槽へと成長に合わせて水槽間を移動しましたが、これは餌料を効率よく与えるためと、運動量を考えたからです。

 孵化稚魚を孵化水槽から30l容器に移動する時は、スポイトやチューブなどを試しましたが、最終的にはビーカーを使用することにしました。
30l容器から1t水槽、1t水槽から30t水槽への移動は、ビニール袋を使用したり、プラスチックケースを使用したりしましたが、ショック状態に陥り死亡する個体が多く、水槽間の移動が原因で4割の稚魚が死んでしまうこともありました。

 30t円形水槽は照明を工夫し、徐々に明るくしたり、暗くできるように調光する装置をつけました。この他にも水流を調節するための配管をつけたり、外からの光を遮光するカーテンや飛び出しを防止するフェンスを設置するなどの工夫をしました。

 このように失敗や工夫を重ねながらサンマを卵から成魚へ育成することに成功しました。

 次回は、産卵床の開発と水槽展示についてお伝えします。

 (飼育展示課 津崎  順)


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