機関誌第5号「AMFNEWS」 -001/007page

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AMF MARINE SCIENCE
海洋の科学

サンマの飼育と展示 III

Breeding and Exhibit of Pacific Saury,Cololabis saira,by jun Tsuzaki

産卵床に産卵するサンマ
▲産卵床に産卵するサンマ
 Pacific saury spawning on substitutes

 サンマの飼育は、様々な試行錯誤を繰り返して、小名浜沖の流れ藻に付着していた卵から、成魚まで育てることに成功しました。
また、高知県で採集したサンマを水槽内で繁殖させて2世を育てることにも成功しました。

 次に私たちが考えたことは、どうしたら周年展示が可能になるか、ということです。

 サンマの寿命は約1年と言われています。展示効果を考えると、孵化から全長10cm未満のサンマは小さすぎて展示に適しません。
自然繁殖だけに頼ると限られた期間しか採卵できず、稚魚が10cm以上になるまでの3ヶ月間は展示ができないことになってしまいます。
周年展示をするには、繁殖時期のずれている2つ以上のグループを飼育し、予備水槽で常に繁殖させながら展示する必要があります。

 オープンまでのたったの3年間で、どのような飼育実験を行えばよいのでしょうか。

産卵床の開発

産卵床の試作
▲産卵床の試作(左よリビニール、ロープ、チューブ、  塩ビパイプの輪切りを材料にした産卵床)
Substitutes for spawning;nylon,rope,plastic tube and pvc by turns from left

 サンマが産卵する産卵床(卵を産みつけるもの)には、自然海と同じ流れ藻(ホンダワラ等の海藻類)が最適であることはわかっていました。
しかし、必要な時に入手できなかったり、海藻が腐って水を悪くする恐れがあります。そこで流れ藻に代わる産卵床を作成しようと考えました。

作成するにあたっては、

 ・サンマが警戒せずに産卵できるもの
 ・安価で入手でき工作しやすいもの
 ・卵の管理がしやすいもの

を考えました。

 そこで最初に考えたものは、ビニール製の人工海藻です。
しかしサンマはこの産卵床に産卵するものの、ビニール自体がかさばって管理しにくい欠点がありました。
次に鹿児島県でサンマが定置網のロープに産卵していたことを思い出し、ロープに浮き(フロート)と重りをつけて水槽に入れてみました。
サンマはこれにも産卵はしましたが、卵が密集して中心部では酸欠で腐敗する欠点がありました。
この他にも発泡スチロールやビニールチューブを材料にしたものを実験しましたが、どれも一長一短があり満足できませんでした。
最終的には、塩ビパイプを輪切りにしてチェーン状にしたタイプのものが、卵塊の潮通しがよく、扱いやすい事がわかり、やっと期待通りの成果を上げられるようになりました。

水温による産卵期の調節

 サンマの産卵時期を調節するには、まずサンマが自然海でどのように暮らしているのかを分析する必要があります。い


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