機関誌第6号「AMFNEWS」 -001/007page
AMF MARINE SCIENCE
海洋の科学サンマの飼育と展示 IV
Breeding and Exhibit of Pacific Saury,Cololabis by Jun Tsuzaki
▲山吹色の尾ビレをもつサンマ
Pacific Saury,With a bright yellowof caudal fin base in spawping season2000年5月、飼育困難生物実験施設では、累代飼育4世代目のサンマ500尾が全長約10cmに成長しデビューを待っていました。
しかし展示水槽では、サンマを落ち着かせる方法、つまりガラスを通して観覧通路からは水槽の中のサンマが見えるけれど、サンマからは人間の姿が見えない工夫はないか悩んでいました。
水槽の前であれこれと考え、水槽の中に入ってサンマの立場から観覧通路を眺めて、「サンマの飼育は成功しても、展示は無理なのか。」と嘆く日が続きました。開館まであと3ヶ月を割った頃、夕方薄暗くなった隣のサンゴ礁の水槽をぼんやりと眺めていた時に、あるアイディアがひらめきました。
照明器具の工夫
▲水槽と観覧通路(断面)
Cross section of exhibit tank of Pacific Saury当たり前の事ですが、暗くなると全ての物は見えにくくなります。
これを利用できないか……観覧通路を暗くすれば、サンマからは人間の姿は見えない、水槽の中だけを明るくできれば人間からはサンマの姿は見える。さっそく実験を開始しました。
まず観覧通路の照明を消し、次に水槽の天井に設置してあるたくさんの水銀灯を、組み合わせを変えて点灯してみました。
すると、水槽の奥(観覧通路から離れた場所)の照明だけを点灯すると効果が現れました。
しかし水槽全体が明るくなると、結局ガラスを通して光が観覧通路に漏れるため人間の姿も照らされてしまいます。
また逆光になるため、サンマ独特の青さがわかりません。
そこで水銀灯よりも光が広がらず、さらに光量を調節できる照明器具に交換することにしました。
こうして、水槽照明準備は急ピッチで進められました。なお、この方法はガラス面に直接照明が当たらないため、茶色の藻類が生えず、サンマが怯えるガラス掃除をしなくてもよいという大きな利点もあります。
水流調節とサンマの試験飼育
照明だけではなく、水流にも問題がありました。
魚は水流に逆らって遊泳する性質があり、水槽内の水流を一定にすることは、サンマの遊泳を安定させることにつながります。