機関誌第8号「AMFNEWS」 -001/007page

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AMF MARINE SCIENCE
海洋の科学

ゴクラクハゼの繁殖

Breeding of Paradise Goby
 Rhinogobius giurinus by Akiko tsuchihashi

卵を護るゴクラクハゼの雄
▲卵を護るゴクラクハゼの雄 
 Male paradise goby guarding eggs
水槽内で産卵された卵と、それを護る雄の個体です。雄の頭上の石一面に卵が産み付けられています。

学名 Rhinogobius giurinus

ゴクラクハゼ卵 
▲ゴクラクハゼ卵 Eggs of paradise goby

孵化直後の仔魚
▲孵化直後の仔魚 Newly hatcheed larva

 ゴクラクハゼRhinogobius giurinusは、茨城県から南西諸島にかけて分布する全長8cmほどのハゼです。産卵は7〜10月に河川の中〜下流域で行われ、孵化仔魚は海に下り、成長に伴い汽水域から淡水域に遡上します。

 ゴクラクハゼが滋賀県立琵琶湖博物館より分譲され、当施設にきたのは平成10年9月、まだ水族館オープン2年前で、生物蓄養準備施設のプレハブの建物の中で、サンマを中心として飼育をしていたころでした。

 蓄養施設で飼育を始めて半月ほどした頃、水槽内でゴクラクハゼが1尾、水槽壁面に張り付き、しきりに胸鰭を動かしているのが確認されました。よく見るとその個体のまわりの壁面には2.5mmほどの長さの棍棒状の卵がびっしりとついています。自然界でゴクラクハゼは、河川の平らな石の下面を巣穴(産卵室)として、卵を産み付けます。そして雄はそのまま巣穴にとどまり、卵が孵化するまで、胸鰭を動かしてに水流を与えるなどしながら守り続けます。

 残念ながら、このときの卵は他の個体に食べられてしまいましたが、その後も産卵が続けて確認されたため、どうにか育成できないものかと、試行錯誤を重ねました。孵化までの卵の管理、孵化後の仔魚の飼育水、水流の強弱等々。その中で特に頭を悩ませたのが、餌の問題でした。孵化直後の仔魚は全長2.5mmほどと大変小さいため、これまでサンマの稚魚育成に使っていたシオミズツボワムシ(以下ワムシ)や、アルテミアでは大きすぎて食べることができません。そこで、仔魚の飼育水内でワムシを増殖させ、生まれたばかりの小さなワムシを食べられるように工夫にしたところ、約1000尾ほどが半年の飼育を経て、25mmほどの稚魚まで成長しました。

 ゴクラクハゼは、残念ながら現在当館で展示はされてませんが、飼育下での初繁殖例として、サンマ、リボンスズメダイ、コモチサヨリ、アマミイシモチとともに、平成12年、日本動物園水族館協会の「繁殖賞」を受賞しました。今後も私たちは、様々な生物の繁殖にチャレンジしていきたいと思います。

(環境展示課 土橋亜季子)


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