機関誌第9号「AMFNEWS」 -001/007page

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AMF MARINE SCIENCE
海洋の科学

アマミイシモチの繁殖〜口の中で卵を守る魚〜

 Breeding of Amboina Cardinalfish
Apogon amboinesis by Koji Matsuzhaki

孵化180日後のアマミイシモチ
▲孵化180日後のアマミイシモチ
 Young,180days oldjuveniles
 学名 Apogon amboinesis

ゴクラクハゼ卵 
▲孵化直後の仔魚 Newly hatched larva

アマミイシモチの特徴

 アマミイシモチはスズキ目テンジクダイ科に属します。このなかまは、雄が口の中で卵を護る「口腔内哺育」をすることが知られています。アマミイシモチは、奄美諸島以南に分布しており、特にマングローブが繁茂する汽水域に群れをつくって生活しています。

産卵行動

 アマミイシモチは、雌の求愛行動が活発です。産卵時期が近づくと、雌がなわばりをつくり、求愛中の雄に近づく他の個体を執拗に追い払います。

 飼育下において産卵は、3月下旬から12月中旬まで確認され、冬季は産卵が確認されませんでした。1年を通して、水温や水質が一定の飼育条件下であることを考えると、自然光による日照時間の変化が、アマミイシモチの繁殖行動を誘発する大きな要因の一つと考えられます。

 繁殖習性 〜口腔内哺育〜

 1回の産卵数は3000粒以上で、卵塊となって産み出され、受精後に雄はこれを口の中に収めます。口の中では、卵に十分な酸素がいき渡るように、時々卵塊を転がします。口内哺育中の雄は、驚かせてしまうと、口の中の卵を吐き出したり、飲み込んだりしてしまいます。吐き出されてしまった卵は、酸素がいき届かないため、たちまち死んでしまいます。平均水温23.5℃では、孵化まで14日間を要し、この間、雄は餌を食べずに、卵を口の中で護ります。一方雌は、産卵が終わると、卵にも雄にも無関心になります。

孵化仔魚の育成

 口内哺育を行っていた雄は、孵化した仔魚を食べることはありませんが、仔魚への給餌の問題から、孵化直前に雄ごと仔魚育成水槽に移動します。この水槽では、目の粗いネットを使用して、雄と仔魚が自然に分離するように工夫してあります。

 孵化仔魚は、卵黄が消失した孵化後4日目からシオミズツボワムシを食べ始め、孵化後12日目からはアルテミア孵化幼生、孵化後55日目からマアジ、アサリ、アミのミンチを給餌しました。そして孵化後350日目には、平均全長が約60mmになり、産卵行動と口内哺育が観察されるようになりました。

 アマミイシモチの展示水槽

 アマミイシモチは、雄が口の中で卵を護るという興味深い生態を持っています。あまり目立たない魚ですが、当館で繁殖に成功した「海を知らないアマミイシモチ」を、マングローブの水槽の中でぜひ探してみてください。

(繁殖育成課 松崎浩二)


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