機関誌第9号「AMFNEWS」 -002/007page
AMF CURRENT RIP 潮目の海
チンアナゴ〜犬?それともお花畑?〜
Garden eel by Tomoyuki Uehara
▲チンアナゴのコロニー
A colony of Gardeneels
▲チンアナゴ Gardeneel
学名 Heteroconger hassiみなさんはアナゴと言ったらきっと、黒くて細長いマアナゴをすぐに思い浮かべることでしょう。マアナゴは私たちアクアマリンふくしまのあるこの小名浜港の近くでもよく釣れるおなじみな魚の一種です。では、「チンアナゴはどんなもの?」と聞かれて、「何それ?」と言う人も多いのではないでしょうか。今回はそんなテンアナゴのお話です。
この魚はマアナゴと同じアナゴの仲間になりますが、生活の仕方はかなり異なります。分布域は高知、琉球、インド洋、西太平洋などの暖かい海で、潮通しの良い砂地に巣穴つくり、集団でくらしています。大きさは30〜40cmになります。太陽の光の届く水深10m前後に多い様で、巣穴はそれぞれが別々になっていて、穴から半分ほど体を出し、流れてくるプランクトンなどを食べます。
また、この魚はとても臆病で驚くと一斉に巣穴の中に隠れてしまいます。小さい水槽で飼育するときには、水槽の中から外が見えない様にマジックミラーの様なフィルムを貼るなどの工夫をすることもあります。餌となるプランクトンは主に小型のエビなどで、アクアマリンふくしまでも同様のものを与えています。
さて、チンアナゴと言う名前ですが、いったいこのチンとは何なのでしょうか?珍しいアナゴと言う意味で漢字で書くと「珍穴子」と書くこともあるそうです。しかし、一般に言われている説は顔が犬の狆(チン)に似ているからなのだそうです。確かに、顔を正面から見たときなどは目が丸く大きく愛橋のあるところはどことなく似ている様にも思えます。また、体の模様も白地に黒の斑紋など似ているところもあり、こういったところからもこの名前の付いたと考えられます。これは和名ですが、では英名ではどうなのでしょう。この仲間は「ガーデンイール」と言い、直訳すると「花畑ウナギ」と言うことになります。これは和名とは違い生活のしかたからつけられた名前です。餌をとるときの巣穴から少し体を出したステッキの様な姿が、大きな集団ではまるで海の中に花畑(ガーデン)がある様に見えることからこの名前がついたと言われています。
アクアマリンふくしまではこのチンアナゴを「サンゴ礁の海」コーナーで展示しています。巣穴から体を少し出してみんなでゆらゆら動く姿は見ていてとても興味深いものです。でも、そうっと観察しないと直ぐに隠れてしまいます。観察におすすめの時間帯は朝の餌の時と夕方です。是非、この変わった魚を見て、犬のチンなのかそれともガーデン花畑なのかよく確かめてください。
(環境展示課 上原智行)