機関誌第9号「AMFNEWS」 -004/007page

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TOPICS 1 企画展「海の美の発見―ふくしまの浜のくらし―」

Temporary exhibition,"Grane in living of fishermen"

ギャラリートーク
▲ギャラリートーク Gallery talk

展示室風景
▲展示室風景 Scene of exhibition room

 現在、大量生産・大量消費のシステムの中で暮らす私達の身のまわりには、たくさんの規格化されたモノがあふれています。しかし、高度経済成長以前、各地には、その風土にあった様々な造形物が職人の手によって作られていました。

 この企画展「海の美の発見―ふくしまの浜のくらし―」では、「用いる」という視点で作られた道具にも「美」が宿るのではないかという視点から、特別な作家ではなく無名の職人によって作られた漁具等や、大漁祝いの晴れ着、絵馬、祭式用具等を10月17日から11月19日までの約1ヶ月間展示し、その中から読みとれる漁民達の祈りや願いの形を紹介しました。

 まず、展示室に入って観覧者の目にとまったのは、大漁祝いの晴れ着である万祝22点 (県内外の資料…いわき市周辺の資料、千葉県房総地方の資料、宮城県三陸地方の資料)だったのではないかと思います。この万祝(マイワイ)とは大漁の祝いに船主が船方に配る晴れ着のことで、北は青森県から、南は静岡県までの太平洋沿岸にしか分布しておらず、それぞれの地域の絵柄の違いをご覧いただけたのではないかと思います。また、福島県に点在する海に関する絵馬(船絵馬2点、地引図絵馬1点)、大漁旗7点、そして主に福島県の沿岸漁業で使われていた1〜2人乗りの伝馬船(磯船)やその漁で使われていた漁具等、約200点を所狭しと展示しました。その中で、当館としては初めて、県指定の重要文化財5点(房総地方の万祝4点と地引図絵馬1点)を展示し、美術的にも歴史的にも、価値の高い資料として公開することができました。

 加えて、水族館機能をフルに活用して、実際、沿岸漁業で獲られてきたマダコやマアナゴ、ホウボウや山の神の供物としてあげていたケムシカジカ他を、タコツボなどの漁具と共に展示しました。このように今回の企画展では、博物館的機能と当館の機能をうまく融合させた展示ストーリーが構成できたのではないかと思います。また、期間中、ギャラリートーク(展示解説)も毎週日曜日に行い、多くの方々に、より深い内容を理解いただけたのではないかと思います。

 最後に当企画展の感想をアンケートから引用して紹介します。

「アクアマリンにきたのは2回目ですが、企画展は毎回趣向をこらしていて大変楽しみです」「山のものが海の生活をみたので、大変おもしろく勉強になった」「こちらの風俗を知ることができ、大変有意義だった」「もう少し映像がほしい」「展示品に対しての解説をもう少し詳しくしてほしい」

 このような御意見を踏まえ、今後も入館者の皆様が興味を抱くような企画展、そして工夫を凝らした展示を展開していきたいと考えています。

(学習交流課 真壁敬司)


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掲載情報の著作権はふくしま海洋科学館に帰属します。
ふくしま海洋科学館の許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。