福島県植物誌 -000-68/483page

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まえがき

 故小林勝、鈴木貞次郎両先生が福島県植物誌の編さんにとりかかったのは、終戦後間もない昭和27年(1952) であった。物資不足の時代であったため、シダ植物から被子植物合弁花類までガリ版ずりで5巻に分けて出版 された。県内の多くの植物愛好家の協力のもとに編さんの仕事が進められたが、単子葉植物およびコケ植物を 残して中断された。
 その後30年、食糧増産のための開墾にはじまり、続いて近代都市化、交通網の整備、ダム建設、観光開発に などによる自然の破壊が相次ぎ、また日なた地の拡大にともない帰化植物がばっこし、反面コンクリートによる 護岸工事とU字溝水路の普及、あわせて水の汚染によって水生植物は大きな打撃を受けた。一方分類学の進歩にともない、 種の概念に変化が生じたものもあり、また植物愛好家により県新産植物や新産地が続々報告されるようになってきた。 そのため県内の植物愛好家の中から自分達で新しい植物を編さんしようという声が高まり、昭和56年福島県植物 編さん委員会が組織された。旧版では、コケ植物は除外されていたが、新版ではコケ植物を含めることになった。 鈴木貞次郎先生の御子息である鈴木貞雄博士が心よく指導をお引き受け下され、また小林勝先生の御家族からは 、調査ならびに出版のために多大の経済的援助をいただいた。本誌は小林・鈴木両先生の御家族と直接または 間接的に指導を受けた植物愛好家の合作であるといえる。 当初5年計画で発足したのであるが、会員それぞれ勤めを持ちながらの調査であるため1年近く遅れてしまった。 しかし、今まで会員各自がもっていた資料に加え、20回近くの合同調査や研究会を持つことにより、現段階で 可能なかぎりの資料を収集できたと信ずる。福島県は照葉樹林地帯の北部に位置することから、福島県を北限と する植物が数多く見られ、会津地方には日本海要素も分布する。これらの植物の分布状況についても、ほぼ明ら かにしえたものと自負している。
 福島大学の鈴木啓治先生、渡辺明先生からは、それぞれ「福島県の地形と地質」および「福島県の気候」の 玉稿をおよせいただいた。また下記の専門の先生方からは種の同定をはじめ多くの有意義な御助言をいただいた。 会員一同心から感謝の意を表する。

                       
コケ植物     尼川大録、安藤久次、井上 浩、岩月善之助、越智春美、長田武正、上村 登、北川尚史、
         斉藤亀三、桜井久一、鈴木兵二、関 太郎、高木典雄、野口 彰、服部新佐、水谷正美、
         山口博則、山田耕作。  
シダ植物     伊藤 洋、金田善一、倉田 悟、中池敏之、中村武久。
高等植物     池上善信、石沢 進、大橋広好、奥山春季、角野康郎、木村有香、桑原義明、小宮定志、
         里美信生、杉本順一、鈴木昌友、細井幸兵衛、路川宗夫、結城嘉美。

福島県植物誌編さん委員会会長

斉 藤  彗 


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