福島県植物誌 -024/483page

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には灰白色の細粒凝灰岩や硬質泥岩および砂岩を主とする300〜400mの厚さの海成層からなる 第三紀層中部から分布する。この上位に,さきにのべた駒止峠層200〜300mの厚さで分布する が,凝灰岩はほとんど溶結している。また,この下位には,軟質の礫岩・砂岩・凝灰岩の互層状 の地層が分布するが,これは新第三紀層中部を不整合におおっている新第三紀層上部の一部で,さ らに駒止峠層も新第三紀層上部の一つである。この山地域では,新第三紀の流紋岩などの貫入岩 体も多い。新第三紀層は,波曲状の構造を示すが,大きくはNW〜SE方向に長軸を有する盆状構 造をつくって分布している。また,N〜SやNW〜SE方向の断層が発達する傾向があるが,只見 町東部には古期岩層と新第三紀層下部を切るN−S方向の只子沢〜小川破砕帯が分布している。

 さらに,越後山脈の地域には,沼沢火山や浅草・守門火山が分布する。沼沢火山は沼沢湖を最 も内側のカルデラ湖とする二重カルデラを形成し,多量の石英安山岩質の溶岩や凝灰角礫岩およ び軽石や火山灰などを,数次にわたって噴出している。とくに,最も新しい約5,000年前の噴火の さいに噴出された軽石や火山灰を主とする火砕流は,只見川の河谷ぞいに流下し柳津まで達し,1 次シラスをつくっている。谷のなかの数段の段丘は,この火砕流によって埋積されている。なお, これらの火砕流の堆積物は河流によって2次的に侵食・運搬され,2次堆積物(2次シラス)とし て只見川の下流域や阿賀野川流域にも堆積した。このさい,いくらか高い段丘までが埋積されて しまっている。浅草岳の火山は,守門岳とともに,福島・新潟の県境付近に分布するもので,安 山岩質の溶岩やその他の噴出物からなる。沼沢・浅草両火山とも1,600m以下の高度でそれほど高 くはない。

 なお,越後山脈の西部はかなりの豪雪地填で,谷壁や山腹の地形もやや特異な侵食地帯を示す ところが多い。たとえば,河谷もV字谷というよりU字谷にちかい形状を示すところが多くみう けられる。

 福島県の南西部の奥只見から檜枝岐にかけては,最高2,100mをこえる三国・帝釈山地の一部が 分布し,急峻な地形をつくっている。この山地の大半は,古生層を含む中生層(ジュラ紀層を主 とする)とこれをつらぬく花崗岩類とからなる。古生層を含む中生層は,粘板岩・砂岩・チャー トなどからなるが,各所に小規模な石灰岩層をはさむ。これらの古期岩層をわって入るような形 で,凝灰岩や不淘汰礫岩などを主とする新第三紀層が,舘岩や大津岐付近に小規模に分布する。流 紋岩体もまたともなわれている。この地域の南西端部には燧ヶ岳火山が,2,300mをこえる高度に 分布する。尾瀬沼や尾瀬ヶ原は,更新世後期における燧ヶ岳火山の噴火のさいに生じた火山噴出 物により,只見川の上流部がせきとめられて生じた古湖沼が,急速に埋積されて生じたと考えら


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