福島県植物誌 -065/483page
福島県の植物区系
福島県の植物区系を論ずるのには、県のほぼ中央を南北に走るミヤコザサ線(図31)が大きな 関係があると思われるので、まずそれについて述べることにする。
I.ササ属の生態
ミヤコザサ線
ササ属Sasaは枝の分かれ方や花序のつく位置、ま た稈や葉の寿命などによってチシマザサ節Macrochlamys、チマキザサ節Sasa、 ミヤコザサ節Crassinodi,アマギザサ節Monilicladae,ナソブスズ節 Lasiodermaの5つの節sectionに分けられ、それらは それぞれ分布域が一定している。ミヤコザサ節、アマギザサ節、ナソブスズ節は 太平洋側に、チシマザサ節とチマキザサ節は日本海側にほとんど限られて分布す る。福島県にはそれらの5つの節がすべて生育してい る。ここではとくにチマキザサ節とミヤコザサ節の関 係について生態学的に述べることにする。
チマキザサ節は稈が高さ1〜2m、剛壮で、ふつう稈の中央部以下の各節から1本ずつ 枝が出て、稈は数年は生きる。葉はやや厚く、上面は通常光沢があり、少 なくとも2年以内には枯れない。それに対してミヤコ ザサ節は稈が低く、高さ通常40〜80cm、小形でやや繊細、枝を分岐せず、ふつう 1年で枯れ、毎年新しいのと交代する。葉は薄く、上面はほとんど光沢がなく、1 年くらいで稈とともに枯れる。
チマキザサ節は日本海側に、ミヤコザサ節は太平洋 側にそれぞれ分布の中心があって、ともに内陸へ分布