福島県水産試験場研究報告 第10号 - 001/073page
福島水試研報第10号 平成13年3月
Bull.Fukushima Pref.Fish.Exp.Stat.,No10.Mar.2001
福島県富岡周辺海域における産卵期のイシカワシラウオ
鈴木 馨・岩上哲也・遠藤克彦
Studies on theTcefish in Breeding Season on the Coastal Region of Tomioka,Fukushima Prefecture
Kaoru Suzuki,Tetsuya Iwakami,Katsuhiko EndoT 小良ケ浜(おらがはま)地先の産卵場
はじめに
「見つかったわ」ひときわ甲高い真喜ちゃん*)の声に、駆け寄った遠藤さんと私の目に、実体顕微鏡を通してまぎれもない魚卵が……。
イシカワシラウオ、Salangichthy ishikawae WAKIYA et TAKAHASIの天然卵の採集を試みてから、すでに4ケ月近くが経過していた。当初、産卵期は2月下旬〜4月上旬と推定して、この時期を中心に、重点的・精力的な調査を組んだ。しかし、卵の採集ができないまま時が経過し、2月上旬から始めた調査も5月の下旬を迎えていた。間一髪、それは予定した最終回の調査であった。
1987年(昭和62年)5月21目、小良ケ浜前面海域に設定した、調査地点の1個所から採取した底質試料より、39粒のイシカワシラウオ天然卵を採集することができた。
卵は径約1oで、ノーティングを楽にするために、ローズベンガルで染色したことにより、胚盤、胚体、外卵膜が、見事なまでにピンクに染まり、反転した外卵膜が、きれいな貝殻片・砂利等を抱いている様子や、透明な受精膜をとおして、卵の発生状況をはっきりと観察することができた(写真−1,2)。このときの
*)豊田真喜子氏:調査のサンプル処理をお手伝い頂いた。卵の第一の発見者である。