福島県水産試験場研究報告 第10号 - 013/073page

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ったと見られた。

 1984年(昭和59年)、丸稚ネットとビームトロール網により、稚仔魚の採集を試みたとき、6月16日の調査で、全長4.1mm〜19.1mmにおよぶ、さまざまな大きさの稚仔魚を採捕出来たが8)、このことも、産卵期が長いことを裏付けていよう。

 ここで、産卵から孵化までの時間はどのくらいかを考えてみると、まず、胚体が形成されるのに4〜5日(水温14〜15℃)がかかっている(人工授精の試みから)。また、胚体が2周している眼の黒い発眼卵は、数日(2〜3日)で孵化した。胚体が形成されてから、発眼卵になるまでに要した日数は、分からないが、これを1週間程度と仮定(追跡調査から観て推定)すると、孵化までは、約2週間程度となる。

 これらのことより、イシカワシラウオには、成長段階の異なるいくつかの産卵群があること、そしてこれらの群が、時期を変えて次々に産卵場を訪れ、この産卵場を利用しているものと考えられた。

 おわりに

 1988年(昭和63年)4月、春の日本水産学会で、ここにまとめたものの一部を、口頭発表(4月2日・第Z会場;プログラムNo.732と、No.733)してから、12年余が経過している。

 今、何故ここに?。そんな疑問をアタマの片隅に、消え失せそうな記憶をたどりながら、当時の資料を引っぱり出して、出来うる限り正確に、たどった道を記した。

 この調査は、福島県温排水調査管理委員会が、毎年実施している温排水調査5〜8)の一環として実施したものであり、詳細のデータetc.については、各年度の報告書に記載してある。その1987年と1986年のデータをもとに、この海域の産卵期のイシカワシラウオに関して、研究的な観点からとりまとめた。

 福島県沿岸海域で漁獲されるシラウオに関しては、竹内の精力的な研究がある。本県の沿岸に出現するシラウオには、2種類あることについては知られていたが、竹内は、沿岸域で漁獲されるものの殆どを占めるものが、イシカワシラウオ、Salangichthys ishikawae Wakiya et TAKAHASHI であることを種の査定により明らかにしている9)。(もう1種類は、シラウオ、Salangichtys microdon BLEEKERであり、本県唯一の内湾である松川浦で採捕されたものについて、平川10)の報告がある。)

 竹内はまた、請戸地先付近において船曳網で漁獲された、イシカワシラウオ成魚の熟度を検討して、産卵期を推定している3)。更に、1982年と1983年の2ヶ年にわたり産卵場調査を実施して、1982年3月5日には熊川前水深10m地点で40粒(すべて発眼卵)、1983年3月8日には小良ケ浜前水深5m地点で572粒のイシカワシラウオ天然卵の採集を報告している11,12)

 イシカワシラウオは、沿岸海域を生活領域としており、寿命も1年と短いため、沿岸域の漁場環境が悪化した場合、最も影響を受けるだろうと予想される。

 私達は、1984年から1987年の4年間にわたり、成長段階別生態を明らかにしようとして、時期を変え、採捕の場所を変え、そして漁法を変えながら、様々な成長段階別にあると思われた、イシカワシラウオを追いかけた。採集に用いたのは、丸稚ネット、ビームトロール網、船曳網、刺し網などであったが、調査海域が岩礁地帯が多かったため、採集器具に様々の工夫をこらした。

 また、この調査と平行して(同時に、同じ場所で)、その生息環境を明らかにしようとの目的で、水質、底質などの環境調査が、東京電力(株)により行われている。解析してみたい多くのデータが眠っている。

 末尾に、調査海域の岩礁分布図を示したが、小良ケ浜の産卵場は、殆どが険しい岩盤に覆われていて、水深4〜5mの砕波帯の中の厳しい自然条件下にあった。はっきり言って、この調査は困難だった。たくさんの人にお世話になった。


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