福島県水産試験場研究報告 第10号 - 027/073page
福島水試研報第10号 平成13年3月
Bull.Fukushima Pref.Fish.Exp.Stat.,No10.Mar.2001
秋サケ来遊の予測手法について
佐藤美智男・鈴木俊二*・鈴木馨
Estimation Method of Adult Returns of Chum Salmon,Oncorhynchus keta (WALBAUM)
Michio Sato,Syunji Suzuki,Kaoru Suzukiま え が き
福島県での秋サケ来遊尾数は、1985年に400千尾を超え、1996年には過去最高の690千尾となった。稚魚の放流尾数は1987年以降、42〜61百万尾で推移し、平均52百万尾となっているが、来遊尾数は年変動が大きい1)。 さけ増殖事業を円滑に推進するためには、来遊変動を事前に予測出来るかが重要なポイントである。
来遊予測手法については、福島県では1976年に石塚が推定方法の仮説2)を発表している。
また、他に北海道さけ・ます孵化場(現、さけ・ます資源管理センター)の阿部が考案したとの話しもあるが、報告書にとりまとめられていない。福島県の来遊尾数の予測(前年の各年魚別来遊尾数に年魚組成比を乗じて予測する手法、詳細については表7に記載)については、1979年以降の年魚組成(以前は「年齢組成」表示を使用)調査結果のデータをもとに1987年から行っている。年度によっては、予測値と実績値にズレもみられる。この秋さけ来遊変動と稚魚放流群の年魚別回帰状況から新たな予測手法の可能性を検討したので報告する。材料および方法
秋サケの来遊尾数の変動については、北海道、青森県、岩手県、宮城県および福島県の1990年〜2000年の各年来遊尾数データの類似傾向を調べた3-7)。なお、2000年のデータは、さけ・ます資源管理センターのさけ捕獲採卵漁獲速報値を使用した。今回の各道県の来遊尾数は、海面漁獲尾数と河川遡上捕獲尾数の合計値とした。また、福島県内の地域差による来遊尾数の変動をみるため、福島県内12河川の遡上捕獲尾数データの類似傾向を調べた。
福島県の稚魚放流年級群ごとに回帰年魚別の来遊尾数から相関により類似傾向を調べた。用いた放流年級群別データは、現有生産施設となって量産放流が実施された年度以降とし、全県は1983年〜1994年、木戸川は1983年〜1994年、請戸川は1980年〜1994年に放流した年級群をデータとした。各放流年級群は、2〜6年魚(以前は「歳魚」表示を使用)で全て回帰しているものとした。回帰年魚別尾数は、前記の年間の平均放流尾数を基準とし、回帰率一定のままに年魚別回帰尾数に再整理し、各年魚間の相関を調べた。なお、1985年以降は給餌飼育が全県で実施され、体重0.6g以上の稚魚放流となっているが、福島県の場合、1979年以降の放流年級群別回帰率はサイズの大型化に伴った回帰率の上昇が明確でなかった1)ため、放流サイズとの関係は考慮しなかった。
また、福島県と来遊尾数の変動について、最も相関の高かった岩手県の放流年級群別年魚間の相関を調べ、福島県と比較した。なお、岩手県の1999年度の年魚組成データは、未発表のもの
*;現在は水産事務所勤務