福島県水産試験場研究報告 第10号 - 026/073page
の資源に対して適切なものとする必要がある2)、4)と思われる。
また、単一の漁業種類のみで漁獲されている魚種もある一方、漁業種類問で資源利用の競合がある魚種も多く、今後、各漁業の経営状態も踏まえ、限られた資源をどの漁法で利用していくべきかについても検討していく必要があろう。
要 約
当県底びき網漁業の1955年以降の状況を、漁獲努力量、対象魚種、漁場利用等から解析した。
1.宮城〜茨城の沖底の漁労体数は、1955〜1975年には減少していたが、1975年以降は、本県の小底から沖底への転換もあり、殆ど減少していなかった。この間の沖底の実質漁獲努力量は増加していたものと推測された。
2.沖底・小底とも、漁獲魚種が類似した年群が認められ、1969〜1999年に沖底は5、小底は6年群に区分された。それらは年代順となっていた。
3.対象魚種の年代による変化は、資源の変動に起因した漁場利用の変化の結果であろうと推測された。
4.沖底・小底・沿岸小型船の間の水揚げ金額魚種組成の類似度から、競合関係がうかがわれ、近年では、沖底は他漁業との競合が緩和される傾向にあるものの、小底と沿岸小型船の競合が著しくなっているものと思われた。
5.主要魚種の資源の減少傾向がみられ、底びき網漁業の実質水揚げ金額は、1969〜1999年の間では1979年をピークに長期減少傾向にあった。
6.底魚資源の持続的利用を図るためには、底魚資源を対象とする漁業の漁獲努力量を見直し、現状の資源に対して適切なものにする必要があると思われた。
文 献
1) 坪井守夫:わが国の底びき網漁業の歴史、水産振興、336、(1995).
2) 山下潤:水産基本政策大綱・プログラムについて―その背景と概要―、水産振興、389、(2000).
3) 平川英人:福島県における小型底曳網の漁場に関する研究、福島水試研報、5、(1978).
4) 佐藤力生:食と海を巡る国民の価値観の変化と現行漁業制度、北日本漁業、28、11-29(2000).