福島県水産試験場研究報告 第10号 - 065/073page
2.第1主成分の解析
(1) 事例解析
第1主成分のみを明確にするため、第1主成分スコアの正負の値が最大となり、かつ第2主成分の影響を受けない(スコアが0付近にある)年を選び、その年の6月の海況図(東北海区100m深水温図、当県鉛直水温・塩分図)を比較検討した。6月を選んだのは季節的な影響が他の月に比べ少ないと判断したためである。この結果、正年では1979年、負年では1984年が選択された。
東北海区100m深水温図(図5)から、正年(1979年6月)は、親潮、黒潮の位置が北偏し、親潮第1分枝の指標となる100m5℃等温線は39°30´N程度までしか南下しておらず、黒潮続流の指標となる100m1O℃等温線は39°N付近まで達していた。負年(1984年6月)は、親潮、黒潮の位置は南偏傾向で、100m5℃等温線は360°30´N付近まで南下し、10℃等温線は房総沖36°E付近までしか達していなかった。しかし、当県沖142°E付近には中心部が10℃台の小規模な暖水域が見られた。
当県の鉛直水温・塩分図(図6)から、正年(1979年6月)は、5℃以下の層は全く見られず、負年(1984年6月)は、表層付近では10℃以上であったが、沿岸部の中・下層は5℃以下の冷水が分布し親潮系冷水が支配した。塩分も同様の傾向で100m深で正年は、ほぼ34.0〜34.5以上、負年は県南の一部を除き33.5以下であった。