福島県水産試験場研究報告 第10号 - 069/073page
で10℃等温線は約50m深付近で上層であった。塩分では、正年のうち1991年6月は塩屋埼定線で34.0以上の高塩分水が広範囲に分布したが、富岡、鵜ノ尾埼定線では33.4〜33.5台の低塩分水が200m以深で局所的に見られた。負年の1989年6月は塩屋埼定線で34.0以上の高塩分水が約200m以深に限って分布しているものの、富岡定線では沖合から34.0〜34.5の高塩分水が表層から200m深付近まで分布した。
また、塩屋埼からの黒潮離岸距離とスコアの関係を検討したが、第1主成分のような高い相関は見られなかった。
(2)コンポジット解析
解析に用いた期間は、スコアの標準偏差が±0.629であり便宜上±0.7以上を示す時期とし(表2)、第1主成分と同様にこの期間の合成図を作成した(図11)。
正スコアの大きい期間の合成図は、三陸中部から常磐北部が負の偏差、常磐南部は正偏差を示し、負スコアの大きい期間の合成図は、三陸南部から常磐北部が正偏差の値が比較的大きく、正負いずれの期間も宮城県沖に変動の中心が見られた。
考 察
1.第1主成分
事例解析から、親潮、黒潮の位置は、スコアが正年では北編傾向、負年では南偏傾向で、当県の鉛直水温・塩分分布からも両年の差異は明らかであった。コンポジット解析からは、正スコアが大きい時期は、東北海区全域が正の平年偏差を、負スコアが大きい時期は東北海区全域が負の平年偏差を示した。以上から、第1主成分の全体変動は、東北海域全体における広範囲なスケールでの黒潮系水、親潮系水の変動により引き起こされていることが推測された。また、伊藤3)も