平成13年度 事業報告書 - 001/171page
T 磯根資源調査
1 資源増大技術開発事業(アワビ・ウニ)
佐藤太津真*・斎藤健
目 的
本県におけるアワビ、ウニ漁業は、人工種苗の放流によって資源を維持し安定を図っている。アワビ、ウニはともに植食動物であり、本県沿岸では同一の漁場に放流される場合が多いことから漁場内での餌料海藻の競合が生じている。また、ウニの過剰放流からその摂食圧によって主要な海藻を消失させ、甚大な漁業被害を被る事例もしばしば見受けられる。
そこで、本事業ではウニの放流密度を変化させた実験漁場においてアワビ、ウニ両種の効率的な生産が持続可能となるようなウニ放流密度の検討を行うことを目的とした。
要 約
実験は県北部相馬市磯部海域において実施した。詳細は「平成13年度資源増大開発事業底生定着種グループ(冷水域)報告書」に報告予定なので、本報告は結果の要約とする。
(1) 海藻現存量調査
各実験区のアラメ年間生産量は実験区1(ウニ3個/u)、実験区2(ウニ6個/u)でそれぞれ0.89kg/u、0.95kg/uであり、実験区2がわずかながらも多い結果となった。これは、本県沿岸で例年になく親潮の影響が強く極めて低水温に推移したため、ワカメを始めとする一年生海藻の生育がよい結果となり、ウニの摂食圧に対応した結果にならなかったものと考えられる。
(2) 追跡調査
ア)エゾアワビ
Hl2年放流群の平成13年6月における平均殻長は実験区1、実験区2でそれぞれ60.6mm、59.0mmで実験区間の有意差は認められなかったが、前回調査時(平成12年12月)からの成長量は実験区2の方が大きかった。また、H13年放流群の平成13年11月における平均殻長は実験区1、実験区2でそれぞれ51. 0mm、52.5mmで実験区2の方が大きかったが、実験区間での有意差は認められなかった。イ)キタムラサキウニ
7月の実験区1、実験区2の平均殻径はそれぞれ54.7mm、52.2mmで実験区間で5%有意水準で有意差が認められた。また、体重及び生殖腺重量はともに実験区1が実験区2よりも大きくなる傾向がみられたが、いずれも有意差は認められなかった。
*現 水産課