平成13年度 事業報告書 - 035/171page
3)シライトマキバイ漁獲実態調査
吉田哲也・佐藤忠勝*
目的と方法
本県でのシライトマキバイの漁獲は、主に沖合たこかご漁業と沖合底びき網漁業で行われているが、平成13年の沖合たこかご漁業は極端に不振であった。しかし、本種は海面漁業漁獲高統計では「その他の貝類」に分類され、正確な漁獲量は把握できておらず、その時々の漁獲量水準を評価する資料が不足している。そこで、漁獲量動向を判断する基礎資料とするため、過去10数年程度の漁獲量を推定するとともに、過去の調査船調査データ、標本船操業日誌を整理した。
詳細については東北底魚研究第22号に記載済みなので、ここでは要約のみを示す。
要 約
(1) 推定漁獲量・金額
・推定漁獲量は、沖合たこかご漁業では平成5〜8年が400t台、平成9〜12年が550t前後で推移した。底びき網漁業では平成3〜10年まで凸凹はあるが100t前後、平成11年以降は60t前後で推移した。
・推定漁獲金額は、平成9〜12年では沖合たこかご漁業が120〜160百万円、底びき網漁業が25百万円前後であった。
・近年では沖合たこかご漁業が総漁獲量・金額の約80%を占め、当該漁業の許可隻数が多い相双地区にとっては重要な漁獲対象種であると確認された。(2) 調査船調査データ
・本県海域における主な生息水深帯は、「いわき丸」のかご調査・トロール調査、東北水研「若鷹丸」のトロール調査によって、200〜300m深と推定された(分布水深帯は150〜500m)。
・近年の殻高組成は、県中、県南海域ともモードの大きな変化、小型貝の目立った加入は見られなかった。
・50%成熟サイズ(雄:殻高約85o、雌:殻高約105o)より大型個体のGSI推移を整理したが、GSIの高い個体は周年見られ、明瞭な傾向は認められなかった。(3) 標本船操業日誌データ
・標本船操業日誌のCPUEは、平成5年には900kg台/日・隻を越えたが、その後一時的に低下し、平成9年以降は600kg/日・隻前後で安定推移した。
・水深帯別CPUEは200〜300m深での変動が著しかった。
・操業水深帯は、平成8年までは250m以浅であったが、平成9〜11年は300〜350m深での操業頻度が高まった。(4) 整理
・相双海域では、主生息水深帯における標本船CPUEの年変動が大きく、操業海域の沖合化も見られることから、資源に変化が現れ始めていることが示唆された。
・平成13年のかご水揚物の殻高組成は、殻高90o以下の割合が30〜50%と高く、成熟サイズ(再生産)を考慮すれば、現在相双地区で自主規制となっている殻高90mm以下の水揚げ規制の更なる遵守が必要と思われた。
*現 水産事務所