平成13年度 事業報告書 - 112/171page
2 ホッキガイの流通・加工に係る試験
藤田恒雄・下園榮昭・根本昌宏
目 的
ホッキガイは、資源量増大による漁獲量の増大、カナダ産輸入品の国内流通により単価低下が著しい。近年は県内のスーパーなどでも安く売られるようになったが、必ずしも一般家庭での消費量が増えているとは考えられない。流通形態も依然として極く一部の例外を除いては殻付きのものに限られている。消費拡大のためには、カキのような剥き身での流通、アサリのような砂抜き貝での流通等の工夫が必要であり、刺身以外の鍋物や焼き物としての食材開発も必要であろう。
ホッキガイ剥き身を生のまま冷凍保存すると、品質が著しく低下してしまい商品価値が全くなくなってしまう。また、ボイル後冷凍保存したものでは低価格で見栄えの良いカナダ産と競合してしまう。高級感のある製品でカナダ産との差別化を図り、消費拡大と付加価値向上を図る目的で、生に近い色と食感を残した状態で冷凍保存する方法を検討した。
方 法
ホッキガイ剥き身を様々な温度と時間で加熱処理した後、凍結保存し、食味試験を行った。なお、レオロジー試験も行ったが、食味試験に比べて感度が劣ったのでここでは省略した。
結 果
(1) 加熱による舌の変色(赤変)
70℃中では30秒、65℃中での加熱では1〜2分間、60℃中での加熱では4〜5分間で舌の変色(赤変)がみられた。55℃中では5分間の加熱でも舌の変色はみられなかった。
(2) 加熱による食味の変化
65℃中で5分間加熱したものは、明らかに歯ごたえが低下し、貝独特のシコシコ感が失われた。また、味については甘みが増した。それ以下の温度で加熱したものは5分間の加熱でも歯ごたえは失われず、味の変化も生のものと大差なかった。
なお、低温殺菌の条件である65℃30分間の加熱では、甘みが増したが、歯ごたえがなくなり、ホッキ本来の食味が失われ、いかにも加工品といった食味に変化した。
(3) 凍結保存後の食味
過熱が不十分なものは解凍後、舌の内部がネトネトになり酸味を感じた。すなわち60〜65℃1分間程度加熱のものは内部まで十分加熱されず、内部は凍結、解凍によって変成してしまう。加熱条件と舌の中心温度の変化、凍結解凍後の食味試験の結果から、中心温度が50℃以上で1分間以上維持する必要があることが分かった。
(4) 生に近い色と食感で冷凍保存できる条件
舌が変色せず、凍結、解凍後でも変質の少ない加熱条件について検討した結果、概ね小型貝では、60℃2分間、大型貝では60℃3分間加熱し、空中で放冷(余熱による加熱も利用)することによって、安定した製品ができることがわかった(図2、3)。また、この条件で加熱した場合、生ホッキガイ独特の生臭さもなくなることがわかった。
加熱温度と時間の条件は貝の大きさや一度に処理する量、室温にも左右されるため、大量処理する場合の加熱条件については個々に検討が必要と思われる。