ふくしま文学のふる里100選-027/30page
皆川博子(みながわ・ひろこ)
昭和五・一・二〜 京城生。昭和六一年に『恋紅』で直木賞を受賞したほか、日本推理作家協会賞なども受賞している。
三島由紀夫(みしま・ゆきお)
大正一四・一・一四〜昭和四五・一一・二五、東京生。『潮騒』『豊饒の海』など数々の名作を残し、四五歳で壮絶な割腹自殺を遂げた。
小山いと子(こやま・いとこ)
明治三四・七・一三〜平成元・七・二五、高知市生。この作品の評価をめぐり、文壇に「ダムサイト論争」が起った。昭和二五年『執行猶予』で直木賞を受賞した。
城山三郎(しろやま・さぶろう)
昭和二・八・一八〜 名古屋生。本名杉浦英一。昭和三三年『総会屋錦城』で直木賞。経済小説で独自の分野を開拓した。
曾野綾子(その・あやこ)
昭和六・九・一七〜 東京生。本名三浦知寿子。キリスト教的思想が根底にある名作を数多く書いている。開発以前の只見を舞台とし、清洌な愛を描いた『只見川』(昭43)もある。
司馬遼太郎(しば・りょうたろう)
大正一二・八・七〜 、大阪市生。歴史小説家。代表作に、『国盗り物語』、『龍馬がゆく』、『坂の上の雲』、『街道を行く』などがある。
南会津の山並み
会津
大内宿
田子倉ダム
73 会津恋い鷹
皆川博子
小説 昭和六一年(一九八六)
南会津の豪農で肝煎(きもいり)の家に生れた娘・さよは気丈な女性。会津藩の鷹匠の下士に嫁ぎ、鷹の飼い方を覚える。戊辰戦争の荒波にもまれて、会津から明治の吉原へ、みだらに美しく時代の嵐の中を生きる姿を描いたもの。書下ろし作品で昭和六一年に講談社から刊行。
74 沈める滝
三島由紀夫
小説 昭和三〇年(一九五五)
昭和二〇年代の後半から只見川電源開発のダム建設がはじまった。城戸昇は電力会社に勤めるエリート。彼はダム建設の越冬隊に加わって奥会津に入る。彼は出発前に人妻の顕子と会うが、越冬が終ると顕子は……。滝に託して不毛の愛を描いた作品である。
75 ダムサイト/黄金峡/無名碑
小山いと子/城山三郎/曾野綾子
小説 昭和二八年(一九五三)/昭和三四年(一九五九)/昭和四四年(一九六九)
昭和二〇年代後半から三〇年代には、電源開発のダム建設ブームが起き、奥会津の只見川に沿って、巨大ダムが次々と建設された。これをめぐり多くの小説が書かれたが、テーマの一つは、住民移転の補償にまつわるもの、他は建設にあたる技術者達の姿であった。
『ダムサイト』は、村の娘ますみと相愛の青年茂治、働き者の茂治も補償の現ナマが出まわると堕落するという筋で、ダム建設のもたらした悲劇を描いている。
『黄金峡』は、用地買収のため、かつて学童疎開でこの地に来たことのある主人公若松が目にする、色と欲のからむ土地攻防と黄金騒動を描く。
『無名碑』は、ダムの建設技術者を主人公にしたもので、ダム工事を終え、東京に戻る途中知り合った女性と結婚した三雲は、その後、子供の死や妻の発狂に直面する。タイ奥地の道路建設に派遣されるが、そこでは更に大きな悲劇が待ちかまえている。
76 峠
司馬遼太郎
小説 昭和四三年(一九六八)
自由な考えをもち、近代西欧思想を学んだ開明論者でありながら、長岡藩を率いて官軍と戦った家老河井継之助の、北越戦争に敗北していく壮烈な姿を描く。継之助は只見村に落ちのび、若松城にいた松本良順の治療を受けるが、塩沢村で息をひきとる。