サクシード中学校国語から高等学校国語へ-008/43page

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論理的文章の理解(1) 論の展開の道筋を把握する

 

◇中・高のつながりを考えたときの指導上の課題と課題解決のための指導のポイント◇

 論理的文章の理解においては、一文一文の正しい読解をもとに、筆者が文章全体で述べようとしていることを的確に把握することが求められる。中・高ともに、論の展開を大きく把握し要旨に迫る力を育成することが課題としてあげられる。

 この課題を解決するために必要なことは、大きく分けて次の三点に集約される。

 1)論の展開の道筋を大きく把握する力をつけること。

 2)意見を述べた部分とそれを支える具体例を述べた部分とを明確にすること。

 3)筆者の思考の方法の特徴を踏まえて文章全体の要旨を把握すること。

 まず、「論の展開の道筋を大きく把握する力をつける」ために、中・高で次の点に留意した指導が望まれる。

中学校  ■各段落で話題の中心となっている言葉に着目し、論の展開を図示したり、見出しをつけて視覚化を図ること。

高等学校□接接詞に着目して文章を読み、論の展開を自分自身で予想しながら巨視的な観点に立った読解に努めること。

 よく晴れた日の夕方、太陽の沈んだあとの西の空に、ひときわ明るい大きな星を見ることがある。時によっては、明け方まだ太陽が地平線に顔を出す前の東の空にも見られる。この星は、地球のすぐ内側を回っている金星という惑星である。全天一といってもいいほど明るいために、昔から「宵の明星」とか「明けの明星」とよばれて、人々に親しまれてきた。金星があんなに明るく輝いて見えるのは、地球に最も近い惑星であるうえに、表面が厚い雲に覆われていて、太陽の光をよく反射するからである。(第一段落)

 昔の人は、地球以外の惑星にもきっと生物がいるにちがいないと考えていた。地球のすぐ外側を回る火星にも、この金星にも、生物が存在するかもしれない。それは、宇宙の神秘を目の前にして人類が描いた夢でもあった。特に金星は、大きさも地球よりは少し小さい程度なので、よく「地球の双子星」とさえいわれていた。(第二段落)

 しかし、いくら地球の上から望遠鏡でのぞいても、厚い雲にはばまれて金星の表面の様子を知ることはできない。そこで、多くの人は思いを巡らせた。「雲があれば、雨が降る。大雨が降り続いていれば、金星の表面には海が生まれているはずである。その海には、たぶん生物がいるだろう。」と。事実、一九四〇年ごろに出版された宇宙探検小説を読むと、金星には広い海があって、宇宙船がその海に着水するという想像の場面が描かれていた。(第三段落)


〔中学校における指導のポイント〕

 論の展開の方法としては、具体的なものから抽象的なものへと論を展開する方法や抽象的な考えを具体例を通して例証していく方法などがある。本文のような身近な話題から出発し、具体的な事例をもとに最終的な結論を導き出す帰納法的展開の文章を理解させるためには、段落それぞれに「見出し」をつけて相互の関係を図示することも効果的である。

○話題の中心を把握する

 冒頭の表現から話題の中心が「金星」であることを大づかみし、次の各段落でさらに、「金尾の表面」「金星の大気」へと論の対象が焦点化され「地球」へと論が収斂していくことを確認する。表現されている「事実」を写真などで具体的にイメージさせるとともに、「硫酸の水滴」等について理科などの他教科の教員との連携を図ることにより、「濃い」「猛烈な」「なんと」という表現に込められた筆者の驚きに迫ることができる。

 また、「このような人類の想像」の指示内容や「驚くべきデータ」が指すものを確認することで文章の前後における論の展開が明確になる。


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