教育福島0001号(1975年(S50)04月)-014page
若さを保つには
社会教育課長
佐藤利三郎
昭和五十年度の県若人の翼の募集が始められている。若者たちはヨーロッパ諸国訪問の希望に胸をふくらませて応募していることと思う。
青年を海外に派遣し、自分の目でたしかめ、膚で感じさせ、考えさせて、広い視野を持った福島県の将来をになう青年を育成しようという事業も今年で四回目を迎えるわけだが、本県の後継者を育てるためのものとしてはまことにすばらしいことであり是非必要なことであると思っている。私も昨年幸いにも若人の翼の副団長として青年代表一〇〇名のかたがたと西ドイツスイスを訪問する機会に恵まれたが、民泊をはじめ、若者たちにはまたとない体験をさせることができ、この若者たちが今、県下各地でその経験を生かしながらすばらしい活躍をしていることをうれしく思っている。
西ドイツのミュンヘンでの民族意識や連帯感にあふれたオクトーバーフェスト(十月祭)への参加を後に、バスでオーストリア、リヒテンシュタインの二国を経由してスイスのインターラーケンに入った。インターラーケンはアイガー、ユングフラウヘの登山電車の始発点である。ユングフラウとは処女の意味だそうで、雪の衣をまとった清そな美しさから名づけられたものなのだろう。雪をいただいて連なるアルプスの山々、すみきった青さをたたえて静まりかえっている山の湖、すそ野から山の中腹に迫っている緑の牧場、のんびりと草をはむ牛の群、ヨーデルがこだまする谷間、道ばたにも花が咲きこぼれている美しい街−スイスは国中いたる所がこういう自然の美しさでいっぱいであった。
この地で百六十年の伝統を誇るマッテンという女性合唱団の人たちと、ビールをいただきながら交歓する機会を得た。この合唱団には八十歳以上のお年寄りが五人もおり、すばらしい合唱を聞かせてくれたり、民族衣装をつけていっしょにフォークダンスを踊ってくれたり、われわれ若者たちが顔まけするばかりに若さを発揮していたのには、すっかり驚かされるとともにどのようにして若さを保つのだろうかと考えさせられた。
大脳生理学者の時実利彦先生は若さを保つには、「知的好奇心を持つこと」「適度のアルコール」「適度のかけごと」「適度に歌って踊ること」が必要だと言っているが、更に生がい学び続けることが若さを保つうえにょいということを指摘している。
なるほど、マッテンの女性合唱団の若さはこんな所から生まれているのかと思った。
われわれ日本人は、「適度のアルコール」「適度のかけごと」「適度に歌って踊ること」については、ほとんどの人がやっているから、これらは少しおさえながら、変な好奇心をおこさないで知的好奇心すなわち、学習すること、考えること、いや学び続け考え続けることに努力すべきであろう。若さを保つために大いに生がい学習を実践して行きたいと思っている。