教育福島0003号(1975年(S50)07月)-007page

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更に、その第二項には、「社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ……」という規定があり、憲法の二十二条職業の自由、職業安定法第二条との関連を示している。

また、高等学校指導要領では、第一章総則の冒頭において、「学校においては、法令及びこの章以下に示すところに従い、生徒の人間として調和のとれた育成を目指し、地域や学校の実態及び生徒の能力・適性・進路等を十分考慮し、課程や学科の特色を生かした教育ができるように配慮して、適切な教育課程を編成するものとする」と、教育課程編成上の一般方針を示している。更に、総則の第二節には第二款指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項として、「個々の生徒の能力・適性等の的確なは握に努め、その伸長を図り、生徒に適切な各教科、科目や類型を選択させるように指導するとともに、進路指導を適切に行うこと…」と規定されている。また、高等学校進路指導の手引き、学級担任編においても「生徒が自ら、1)進路に関する選択や計画を立て、2)卒業後の新しい生活によりょく適応し、3)更に進歩向上を続けることに必要な能力を伸長する」ことを目指して、学校が組織的継続的に援助する過程が進路指導であるとしている。これは、進路指導の充実こそ、課程、学科の特色を生かす教育に貢献するものであることを示すものである。

 

三、進路指導の当面する目標

 

(一) 進路指導の意義、本質の的確な

は握による全校的協力体制の確立

(1) 既に述べたように、進路指導は生徒が自己の進路について考え、個性に応じて進路を選択し、更に、将来の生活において自己を進歩向上させていくことができるような能力を養うために、教師が指導援助することである。したがって、単に卒業期における就職や進学のあっせん指導に終わることなく、職業の持つ個人的・社会的意義を正しく理解させ、職業を通して社会に貢献する心構えを養うなど、正しい職業観、価値観の育成に努め、一人一人の生徒が将来どのように生きていくかを考えさせる「生き方の指導」が大切である。

(2) 進路指導の充実を図るためには、全教職員が学校の教育活動のあらゆる機会を通じて、組織的継続的に指導する心要がある。そのためには、

1)校内研修やその他の機会を通じて、進路指導の意義、本質について全教職員の共通理解を図ること。

2)各教職員の進路指導における分担や協力のあり方を明確にし、組織的な指導体制を作ること。

3)進路指導主事は組織内容を十分理解し、専門的な知識や技能を修得し、全教職員の理解と協力体制が作られるよう努めること。

(二) ホームルームにおける指導内容の検討と指導法の改善

(1) 進路指導は、学校教育活動全体を通じて行われるものであるが、ホームルームにおける進路指導は、計画的系統的に行われる中核的な指導の場である。

(2) ホームルームにおける進路に関する指導内容は、指導要領に示されるとおり、主として「進路の吟味と選択、将来の職業生活等への適応など」であるが、指導計画の中に具体化する場合には、他の指導内容との有機的な関連を図り、構造化するとともに、各学校の課程、学科の特色や生徒の進路の希望を十分反映した具体的な主題を、各学年にわたって、取り扱うことが大切である。

(3) 生徒が、興味と関心を持って、積極的に進路の学習に取り組むよう、指導法に一層の改善が必要である。例えば、

1)知織の伝達や資料、情報の提供のみに終始しないよう、具体的な事例を通して指導する。

2)生徒が自分たちの問題として、計画や資料の準備にも参加し、活発な学習活動が展開されるよう努める。

3)職業観、人生観の指導に当たっては、先輩や先人の生き方、生徒の意識調査など、適切な資料を用いて生徒と教師が互いに考え合っていくことが大切であろう。

(三) 個人尊重に基づく公正、適切な

進路の指導

(1) 進路指導は、それぞれ能力・適性等を異にする個々の生徒にかかわる問題であり、進路相談による個別指導の徹底が必要である。すなわち、進路指導はホームルームを中心とした集団指導に始まり、個人指導の場である進路相談に深化発展しなければならない。相談に当たっては、指示的な相談に終わることなく、生徒の個人的な悩みの解決を援助し、自己理解の深化を図り、進路を選択する能力の伸長に努めることが大切である。

(2) 進路指導における個人資料は、教師の生徒理解のためばかりでなく、生徒が自己を正しく理解し、進路の選択決定に関する問題を解決する上に欠くことのできないものである。調査・検査の活用に当たって特に留意すべきことは、その効用と限界を十分研究し、結果の解釈を慎重に行い、生徒が自己の個性を固定的に理解することなく、発達的にとらえるよう指導することが大切である。

(3) 就職希望生徒の指導に当たっては特に就職の機会均等が図られ、採用選考において、生徒の能力・適性が公正に評価されるよう十分配慮しなければならない。すなわち、統一応募書類の趣旨に基づき、生徒の進路が保障されるよう関係機関と連携を図り、教育的配慮を持って指導に努めることが必要である。

 

 

 


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