教育福島0006号(1975年(S50)10月)-039page
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それから前述のことまで訂正するのであるから、極めて知的で持続的な注意力、エネルギーを必要とする苦役と言ってもよい。
特に教育史のような、歴史学としての明徹な学問的評価に堪え得る科学的論文の記述の場合には、教育史的、教育学的、教育実践的な知識の裏付けがないと、十分な校正の任務を達成することができないので、この苦労は並たいていのことではない。
それで、この校正には事務局一同大いに苦労したものであった。幸い誤植はほとんどなく、大方の高い評価をいただいたことは、事務局員一同、喜びに堪えない。
この仕事を通じて得た貴重なものの一つに、いわゆる歴史的真実とは何かということがあった。
それは、論述の基底となっている根本史料に錯誤があることである。現時点においてもやむを得ない諸般の事情から、事実と一致しない資料を作ることなどもあろう。そのような場合に、史的認識が事実と相違して展開され、定着した表現が正鵠を得ていないことがあり得るということである。この点について、執筆者でもあったH氏に問いただしたことがあった。氏は「だから、真の歴史的真実は書かれた歴史の裏にある」と言われた。この問題は、いわゆる歴史学や歴史哲学上の史観の本質にかかわる問題であろうし一新たな根本史料の発掘によってそれまでの定説がひつくり返ったりしている社会科学としての歴史学の宿命でもあろうか。
ともあれ、この教育史編さんの仕事が、明治百年を迎えて遂行されたが、この仕事が歴史的にいかなる意義と評価を後世から与えられるだろうか、の省察は、本巻第五巻の「編さん事業のあゆみ」の中で若干触れてあるので参照されたい。
次に、教育史の内容の主なものを掲げる。
第一巻(先近代・近代前期編)
一、学制以前の教育
・原始・古代・中世の教育。近世(江戸時代)の教育。明治維新当時の教育
二、近代教育の創始
・創始期の小学校とその実態。師範教育の創始。初期中等・専門的教育の創設。青少年教育と自由民権運動。郡教育会の設立とその概況
三、教育制度の確立
・幼児教育の誕生。義務教育制度の確立
・小学校教育の実情。中等教育と実業教育の転回。師範学校令と師範学校教育。教育行財政。通俗教育。本県教育界と教育会の動向
四、近代教育制度の整備
・学校令の整備と本県の実情。国定教科書制定をめぐる諸問題。就学・出席の督励
・教員養成制度。社会教育。育英事業。教育研究の動向
五、教職員の実態
・教職員数の変遷とその実情。教育令下の教職員。学校令と教員
第二巻(近代後期編)
一、近代教育の拡充と県教育
・大正期の教育行財政と教職員。幼児教育
・小学校教育の展開。中等教育機関の拡張と変容。教員養成機関。社会教育体制の強化
二、準戦時体制下の教育
・不況下の教育。教育施設の増加・向上
・教育内容の改編。幼児教育。特殊教育
・小学校教育の実際。中等学校教育の不安と均衡。師範教育。高等専門教育。青年教育。社会教育
三、戦時体制下の学校教育
・幼児教育。特殊教育。国民学校令と教育の実際。中等学校の変質と転換。高等専門学校の教育。青年学校の教育。私立学校
・社会教育の概況
四、教育関係諸団体及び推進運動
・県教育会、郡教育会の動向。戦時下の校長会。女教員会のあゆみ。各科研究会研究推進運動。育英事業
五、教職員の実態
・内外の情勢と教育界。教員の資格・名称
・任免。教員数。教員の待遇。教職員の服務。福利厚生
第三巻(現代編1))
一、終戦当時の教育
・混乱の教育現場。軍政府の教育管理
二、教育制度の改革と新教育
・学校教育制度。教育委員会制度。新教育内容と方法
三、学校教育の実情
・幼児教育。小学校教育。中学校教育。特殊教育。高等学校教育。大学・高等専門学校。私立学校
四、社会教育の再編成
・混乱期の社会教育。PTAの結成過程とその活動。教育委員会発足以後の社会教育
・婦人教育。青少年教育の動向。社会教育施設とその活動。県民文化・芸術・文化財
五、新教育制度下の教職員
・教職員の再教育と現職教育。教職員の身分・待遇。教職員の定員定額の問題
六、福島県教員組合の結成とその動向
・教員組合の結成。県教員組合の活動。教育研究集会と民間教育研究
七、教育関係諸団体の活動
・大日本教育会福島支部の活動。福島県新教育建設同盟の結成と活動の概要。各教科研究と教科外研究。小・中・高校長会。育英事業
第四巻(現代編2))
一、教育行政の展開
・教育行政。勤務評定の実施とその経過
・学校管理の変遷とその諸問題
二、学校教育内容・方法の改善
・教育課程の改訂。学力向上と教育方法の改善。視聴覚教育・教育工学。へき地教育と山村教育
三、学校教育の実情
・幼児教育。小学校教育。中学校教育。特殊学校教育。高等学校教育。高等教育機関と学生。私立学校教育の概要
四、総合社会教育の推進と発展
・社会基盤の変動と重点施策。青少年教育の対策と問題点。成人教育と家庭教育の拡充。社会教育施設の整備。芸術文化。文化財の保護と活用
五、教育行政改革と教職員
・管理及び服務関係規則等に関する諸問題。教職員の福利厚生の改善。研究機関による研修。研究指定校
六、教職員組合の動向
・民主教育を守る運動。生活と権利を守るたたかい。平和と民主主義を守る運動。教組並びに民間の教育研究運動。県立高教組の組織と活動。県教連教育研究所の活動第五巻(統計・年表編)
一、学校統計
二、教育財政統計
三、社会教育統計
四、教育行政機構の変遷
五、県各種受賞者一覧
六、年表
七、福島県教育史編さん事業のあゆみ
(前教育センター教育資料係長 佐々木勝夫)
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