教育福島0010号(1976年(S51)04月)-040page

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図書館だより

 

「図書館記念日」と「図書館振興の月」に寄せて

 

一、はじめに

昨年1千九百七十五年−は「国際婦人年」ということで、数々の話題を世に投げかけた年であった。

ところで、千九百七十二年が「国際図書年」であった、ということを知っている人々は何人いることだろう。いや、千九百七十二年の時点においてさえも、関係者以外で、果たして幾人の人達が関心を示していたことであろうか。はなはだ心もとなく思える。

それにしても、千九百七十二年という年は、図書館界にとって大きな意味をもった年であった。この「国際図書年」を契機として、徐々にではあるが、大きく明るい将来への展望が開かれていった時期であるからだ。

 

図書館記念日のポスター

二、国際図書年と図書館記念日及び図書館振興の月の設定

 

二、国際図書年と図書館記念日及び図書館振興の月の設定

ユネスコの第十六回総会は、千九百七十年の会議において、千九百七十二年を国際図書年 (InternationalBook Year)と宣言することを満場一致で決議した。その目的は、現代社会における図書の意義と役割を、広く世界各国の国民に認識させることにあった。それは、先進国、発展途上国を問わず、文化の維持・継承・発展・交流のための基本的手段として、図書がますます重要な意義を帯びてきたからである。

宣言は「書かれた言葉が、人類文化の進歩のために有する重要性」を考慮し、また「図書および定期刊行物が、社会生活及びその発展において本質的な役割」を果たすことを考慮し、ユネスコの目的、すなわち「平和・開発・人権の拡張及び人種差別と植民地主義の撤廃」を実施するためにも、「図書が基本的な機能を果たすことを確認する」と述べ、千九百七十二年を国際図書年として宣言すると結んでいる。そして、図書館はそれを収集・組織・保存・提供するなかで、その目的の達成と人類の福祉世界の平和に貢献する重要な分野として位置づけられた。各加盟国において、いろいろな事業がなされたが、わが国でも、ユネスコ国内委員会を中心に、日本図書館協会など関係民間十九団体により取り組みがなされ、この年を期して、日本の図書館界にとっては真に意義深い「図書館記念日」(四月三十日11図書館法公布の日にちなむ)を設定し、それに続く一か月を「図書館振興の月」と定め、広く社会に訴えることにしたのであった。したがって本年で第五回となる。

三、公共図書館の現状と課題

公共図書館にのみ限定していえば−それが我々の最も大きな関心事であり、今回のテーマでもあるのだが−先に国際図書年を契機に大きく展望が開けたといえる。より正確にいえば、図書館側の、ここにいたるまでの地味で目立たない努力が何年となく積まれてくる一方で、それに呼応するかのごどく、住民の、今まで潜在的に蓄積されてきた図書館要求が、「国際図書年」という刺激剤によって顕在化し、パッと花開いた、ということかも知れない。たしかに、東京都下・三多摩地区の図書館などにみられるように、公共図書館は、一部の人の勉強部屋、市長の記念碑的建造物といった、単なる施設として地域の中で静まりかえっていたのをやめ、幼児から主婦を中心に成人まで多くの住民が出入りし、図書館員は、BGMの流れる明るい館内で応対に忙しい。二千冊前後の本を積んだ自動車図書館が各地を巡回して本を届けてくれる。予約注文も聞いて次の機会に届けてくれる。人口十八万人ほどの都市で、住民の三〇%以上が図書館に登録し、年間九十万冊、市民一人当たり五冊の普及状態を有する図書館があらわれ、ようやくわが国にも"国際級"のデータに近づくところが出現したことも事実である。その意味では、ほんの一部であるとはいえ、有力な指標であり明るい展望といえるだろう。が、欧米諸国のそれに比較するなら、社会的存在意識も活動内容の面からも、質量ともにまだまだそのレベルにはほど遠く、さらに本県の状態は、その低いわが国の平均をも下回る、というのが偽らざる実態である。

先にみたユネスコの宣言、また図書館法(−憲法 教育基本法−社会教育法)という法体系の中の)に示された図書館の役割は真に重要である。特に、今日「生がい教育」ということの重要性がくりかえし叫ばれているが、その中枢的な位置を図書館は十分に担えるし、図書館こそが担う責任を有していると考えられる。

第五年次を迎えた「図書館記念日」と、それに続く「図書館振興の月」を機に、改めて図書館の本来的な意義と役割を広く訴え、新たな前進のための決意をひれきする次第である。

 

 

 


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