教育福島0010号(1976年(S51)04月)-044page

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=福島の文化財=

 

県指定天然記念物 白山沼イトヨ生息地

北会津郡北会津村下荒井字中里前2950

 

白山沼は、水田や耕地に取り巻かれた幅十数メートル、長さ三百メートルほどの北会津村最大の湧水沼である。ここに生息するイトヨは、一平方メートルに三〜五個体ほどで、総面積からすれば一万尾を越すと思われ、この他、ドジョウ・タニシなどの淡水生物も豊富である。

イトヨ(学名・ガステロステウス・アクレア−ツス・リンネ、会津地方での俗名、トゲチョ、トゲス、アイヅカツオ)はトゲウオ目、トゲウオ科、イトヨ属の体長五センチメートル程度の小魚で、からだの割りに大きな三本の疎をもち、巣をつくる魚として注目される。イトヨには、産卵期に海から川をさかのぼる潮河型と、一生を淡水域でおくる陸封型とがあり、寿命はともに一年(まれに二年一である。日本では、潮河型は比較的広い範囲に分布しているが、陸封型は福井県大野市、栃木県大田原市、福島県会津地方の白山沼など湧水が豊富で比較的冷水(一六〜一八度C前後)のうえ、年間水温が一定で、砂礫が多いなど限られたところにしか見られない。イトヨは四〜六月頃が繁殖期で、雄は眼や背が青緑色になり、腹側が紅色をおびる。雄は繁殖期になると同種の雄を追い払って一定の広さのなわばりをつくり、水底にすりばち型の穴を掘って水草等でかまくら型の巣を作る。ここに雌を誘い入れて産卵させ、後から巣に入って受精させる。産卵した雌は追い払われ、雄は卵が艀化し、ある程度成長するまで幼魚を守り育てるなど興味深い習性を持つ。

白山沼イトヨ生息地は、イトヨの生息密度が高く、生息環境も良く、面積が三千二百八十四・一平方メートルで本県随一であり、全国でも屈指の規模をもち、文化財としての価値はきわめて高い。

 

白山沼イトヨ生息地

白山沼イトヨ生息地

水そうで観察中のイトヨ

水そうで観察中のイトヨ

 

 

 


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