教育福島0012号(1976年(S51)07月)-007page

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中学校における進路指導の進め方

 

科学技術の著しい進歩、産業・経済の高度成長、国民生活の向上等、教育をとりまく諸情勢は著しい進展を示し上級学校への進学者は急激に増加している。

このような社会情勢の中にあって、中学校では、高校入試のための準備教育が問題になり、また、知的な面だけで人間の価値が判断されたり、父母の強い希望によって生徒の能力・適性を無視して進学先が決定されたり、目先の収入だけを考えて就職先を決定するなどの問題が多い。改めて進路指導の重要性を痛感するしだいである。

県内のある中学校が、三年生の高等学校進学希望者を対象として、高等学校卒業後の進路について、どの程度考えているかを調査した。それによると

○ 高等学校卒業後のことは考えていない。(六一%)

○ 就職したい。(三二%)

○ 大学へ進みたい。(七%)

このことから、高等学校進学希望者の大半は、高等学校へ入学することだけが目標であり、この時点では、高等学校卒業後のことまでは考えていないというのが実態であると思われる。

 

一、進路指導における態度の問題

 

中学校における進路指導の問題は、教師の進路指導や生徒の進路に対する保護者の態度、または、生徒自身の進路に対する態度の問題などさまざまである。次に、それぞれの立場から主な問題点をさぐってみよう。

(一) 教師の態度

1) 教師の進路指導に対する共通理解が不足し、進路指導の時期が三年生にのみ限定されがちである。

2) 生徒理解の検査・調査はするが実際の進路指導の資料として総括的にじゅうぶんな活用がなされていない。

3) 進学させようとする高等学校の施設・設備や卒業生の動向などの特徴や情報等を詳細にとらえて、親や生徒に提供することがじゅうぶんでない。

4) 教師の進路指導に対する共通意識に乏しく、関心も浅い。

(二) 保護者の態度

1) 保護者が自分で考えている進路を生徒に押しつけることが多い。

2) 学校の情報や担当教師の意見をすなおに受け入れていないことがある。

3) 保護者のみえや欲目で、生徒の能力以上の高等学校進学を希望させている例が多い。

(三) 生徒自身の態度

1) 自分の進路決定について教師に心から相談をしていない。

2) 教師の指導を無視して、進学先を親や兄姉のみの意見で決めてしまうことが多い。

3) 自分の将来について見通しがあまく、深い関心をもっていない。

以上の問題点は、生徒自身の考えやその環境のちがいがあるので一概に断定することはできないが、共通の問題として指摘してよいと思う。

 

二、進路指導の再認識の必要性

 

進路指導は、生徒自らが自己の進路について考え、個性に応じて進路を選択したり、更には将来の生活において自己を進歩向上させていくことのできるような能力を養うという目的をもったものである。ところが、ややもすると、生徒の就職あるいは高等学校選択の指導であるという程度の単純なものと解されやすい。そこで、中学校における進路指導は、教師が学校のあらゆる教育活動の場を通じて、組織的・継続的に行う重要な教育活動であることを、改めて確認することが必要であると考える。

(一) 進路指導は、生徒みずからの生き方についての指導・援助である。

○ 単に知識・技能の習得を目指すものだけではない。

○ 明日の社会に生きるために必要な、自主性や価値観を持ち、自己指導が可能な生徒を育てる教育である。

○ 変動する社会の中で、正しく自己を生かすことができるように、しつかりした、人生観、職業観を進路との結びつけのうえで、自覚させ、指導・援助するものである。

○ いわば、生き方の指導であり、人生設計の指導ということができる。

(二) 進路指導は、個々の生徒の職業的発達を促進する教育活動である。

○ 生徒が三年になって、進路決定をしなければならないからといって急に知識や情報を提供したり、検査や調査を実施して進路相談を行う程度ではふじゅうぶんである。

○ 中学校入学の段階から三か年にわたって、計画的、継続的に指導しなければならないものである。

(三) 進路指導は、一人一人の生徒をたいせつにし、その可能性を伸長する教育活動である。

〇 一人一人の生徒を、かけがえのない価値的存在、独自的な人格として尊重することは、学校教育の基本的方向である。そして学校の進路指導の基本理念でもある。

○ 個々の生徒は、その資質や興味

 

 

 


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