教育福島0014号(1976年(S51)09月)-041page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

やさしい教育法令解説

 

学校施設の目的外使用について

 

一、はじめに

劇団の演劇会や政治家の個人演説会あるいはスポーツ等のために、学校の施設が利用される例は少なくありません。殊に公共施設が比較的少ない地域においては、なおさらです。そこで、今回は学校の施設の利用をめぐる問題について、述べてみたいと思います。

二、学校の施設の意義

まず学校の施設ですが、これは例えば校舎、体育館、プール等の工作物や校地等を指しますが、これらは地方自治法上(以下「地自法」という。)「行政財産」といわれます。すなわち、県や市町村において公用又は公共用に供される財産のことです。(なお、行政財産以外のいっさいの公有財産を普通財産といいます。)また、学校の施設は、学校教育のために用いられる財産ですから、その意味で公共用財産ともいわれます。

三、目的外使用に関する法令

次に、学校の施設の目的外使用に関する法令にはどのようなものがあるか使用形態の点からみてみます。

(1)教育委員会等の許可を得る場合

地自法第二百三十八条ノ四第三項は「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。」と定めており、また学校教育法第八十五条は、学校教育上支障のない限り学校の施設を社会教育その他公共のために使用させることができる旨定めています。いずれも財産の効率的効果的な運用を図るために認められるものです。

また、学校管理規則は、目的外使用の許可に関する要件を定めているのが一般ですが(市町村公立小・中学校管理規則準則、福島県立学校の管理運営に関する規則参照。)これは、前記法律の趣旨をより具体的に規定したものと解されます。ところで社会教育、社会体育については、教育基本法、社会教育法、スポーツ振興法が積極的に学校の施設を利用させるよう訓示的にしろ義務づけておりますから、優先的に使用させるべきです。また、学校の施設は、学校教育上支障のない限り公共のために使用させることができますが、支障の有無は、教室に余裕がある等物的観点からのみではなく施設使用が児童生徒に及ぼす影響等の点からも判断すべきことは当然のことと思われます。また、公共のためとは、公益を害さない場合とか、専ら私的営利を目的としない場合をいいますが、必ずしも私的目的のために使用することができないということではありません。(例えば学校内の売店や食堂等。)

(2)法令に基づいて使用する場合

この場合の例としては、公職選挙法に基づく投票所や開票所、さらには立会演説会に学校の施設を用いる場合、災害救助法、消防法、土地収用法、道路法等による非常災害その他緊急の際に使用される場合があります。

なお、学校施設が学校教育の目的以外に使用されることを防止し、学校教育に必要な施設を確保する目的のための法律として、「学校施設の確保に関する政令」があります。

四、目的外使用の法律関係

最後に目的外使用の法律関係について考えてみます。

(1)許可権者

学校の施設は、教育財産ですから教育委員会が管理し、従って目的外使用についての許可権も教育委員会にあります。特に法令で許可権者を教育委員会と定めている場合があります。)教育委員会規則等で校長に委任させたり専決(内部委任)させることは、当然できます。(前記準則、管理規則参照。)

(2)許可手続

目的外使用の許可に関する手続は、具体的には、それぞれの法令の規定に従って行われます。例えば社会教育法や公職選挙法、同法施行令等は使用の申出、許可の決定、通知、学校との協議等の取り扱いにつき定めています。

なお、学校の施設を使用して公職の候補者が、個人演説会を開催する場合には、授業、諸行事に支障がある以上使用させないことができる点に注意する必要があります。

(3)許可の性質

学校の施設の目的外使用に関する法律的性質は、私法関係とは異なる公法関係であるとされます。従って目的外使用は、すべて行政上の許可処分によるものとされ、私人の利益保護を目的とする借地、借家法は適用されません。また、公用や公共用に供するため必要が生じたとき許可の条件に違反する行為があると認めるときはその許可を取り消すことができます。(地自法第二百三十八条の四参照。)

更に、この使用に関する行政上の処分に不服のある者は、不服申立てあるいは行政事件訴訟法に基づく裁判上の訴えを提起することができます。

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。