教育福島0015号(1976年(S51)10月)-038page

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福島県教育センターから

 

学力の分布とその対策

−福島県診断標準学カテストの活用−

 

一、標準検査

研修生として当センターに来所される先生がたから「標準検査をどのように活用すればよいか。」という質問を受けることが多い。自分の担当する学級、自分の学校の児童生徒の学力の実態は握は、指導・研究・管理のいずれの目的からも必要とされる。

昨今、偏差値悪者論が話題となっているように、標準テスト一いわゆる高校入試模擬テストは標準化されてはいない)については、次のHolmen,M.Gに代表される批判があるがその主なるものを列挙してみよう。

(一) テストの点数は個人を選別する。

(二) テストは、人間の生まれつきの特

性を測定すると想定される。

(三) テストは、生徒の自己概念をまげさせ、意欲を失わせる。

テストは、教育指導上の資料を得るために実施されるのであって、それ以外に利用されることが批判の原因と考えられる。標準テストを活用するためには、検査の背景にある理論と、検査の限界を知って結果を利用することがなによりたいせつなことである。

そこで、福島県診断標準学カテストを中心として、構成と活用について述べたい。学刀の定義には種々のものがあるが、学カテストによって測定されたものと規定しても、全国学カテスト、全県学カテストの行われていない現在その実態を知ることはできない。ただわずかに標準化されたテストの実施によって、学力の相対的な位置っけを推測することができるに過ぎない。

全国標準学カテストは、全国基準(Norm)により学力を相対的に評定するものであり、到達基準(Criterion)による絶対評価とは異なる。同様に福島県診断標準学カテスト(以下県標準テストという)も、福島県の基準により、学力を相対的に評定しようとするものである。

 

二、テストの構成

テストは、教師作成テストと、標準テストの二つに分けることができる。教師作成テストは、教育目標を基準とした評価であって、達成度を測定する用具であり、カリキュラムや指導目標に照らして個人や集団の学習の到達度や成功・失敗を決定するもので、主として指導過程において用いられる。標準テストは、県又は全国の成績が的確に推定できるような標本を選定し、テスト結果に基づいた目もりづけによって、相対的に位置を決定できるようにした総括的なテストである。

更に、標準テストは概観テストと診断テストの二つに分けることができ、概観テストは、教科の学力を概括的に測定しようとするテストであるのに対して、診断テストは、教科においての個人内差異を明らかにしょうとするテストであって、県標準テストはこれに当たる。

県標準テストにおいては、単なる概観テストでは発見できない学力の欠陥を診断できるようにするため、つぎのような点について配慮してある。

ア 教科内差異をプロフィールで表わす。

イ 学習不振の原因が、どの学習内容にあるか指摘できるようにしてある。

ウ 領域別に問題を設定し、標準化してあるので、個人内差異を偏差値の

比較によってとらえられる。エ 診断的性格をもたせたため、問題

分量が多くなったが、弁別力が高い。オ 評定結果は、各教科とも領域別にT得点をもって表わされていて、児童生徒の相対的な位置っけを知ることができる。

※T得点とパーセンタイル順位

表面尺度である粗点の分布が正規型ではないが、対応する尺度が正規に分布することを仮定して、T変換を行い偏差値として手引き書に示してある。この変換は非線型変換であって、粗点の分布が正規型であるときのZ得点(グラフで示すと直線)とは、いくらかの

たとえばT得点が六十の児童生徒のPRは八十四であるので、この児童生徒の上位には一六。パーセントの児童生徒がいることがわかり、相対的位置はかなり高いことがわかる。

テストの標準化のためには、

内容的妥当性

統計的妥当性

信頼度

実施方法・採点法

標本抽出

についての検討が必要であるが、特に統計的妥当性について、平均正答率が五〇〜六〇パーセント、困難度二〇〜八○パーセント程度であれば、結果的

 

T得点とパーセンタイル順位の関係

 

 

 

 


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