教育福島0018号(1977年(S52)01月)-017page

一人一人の実践意欲を高める道徳教育

常葉町立関本小学校

同　　　山根小学校

同　　　常葉小学校

同　　　西向小学校

同　　　常葉中学校

(昭和五十・五十一年度文部省指定　道徳教育常葉地区協同推進校)

　

一、研究の内容と方法

(一)　研究主題設定の理由について

常葉町内小・中学校は、昭和五十・五十一年度の二年間にわたって文部省道徳教育協同推進校として指定された。

町内児童生徒の実態をみると、教師の観察や道徳性の検査では日常生活の中で問題場面に直面した場合、適切な価値判断により実践しようとする態度に欠けていることが指摘された。

一方保護者を対象とした調査によると基本的行動様式の実践力の向上が強く要望されている。

いうまでもなく、道徳性の育成は、家庭及び社会における指導と一貫性を保ちながら学校の全教育活動の中で行われるべきものであり、しかも実践と結びつく計画的発展的指導でなければならない。しかしいままでの道徳の授業が、平板にして断片的なものに陥りがちで、真に児童生徒の共感を深め、心情をゆさぶり、価値観を変容させ、望ましい行為への意欲を高めるまでに至らなかったことが指摘された。

したがって、町内各学校は共通理解のもとに「一人一人の実践意欲を高める道徳教育」を協同で推進し、道徳的価値の追求を通じて望ましい行為へ主体的に意志決定させ、自信と勇気をもって実践しうる児童生徒を育成するために本主題を設定した。

(二)　協同推進の原則について

協同推進という形の研究であるため共通した研究主題のもとでの研究実践は当然のことであるが、指定各校それぞれ独自に教育上の問題をかかえ、解決のための研究内容や方法をもつことはいうまでもない。

共通した研究主題の目標達成の方法として、同一テーマ、同一内容、同一研究分野ではなく、各校の実態をもとにして道徳教育上の問題点を解明するために、研究交換や資料交換などをとおし、地区全体の道徳教育をもりあげていく方向で各校ごと、それぞれ副主題を設け研究を推進していくことにした。

(三)　副主題

関本小学校

道徳意識を高める段階ごとの発問のくふう

山根小学校

一人一人の道徳意識を育てる発問の吟味

常葉小学校

道徳性を育成するための話し合い活動の指導

西向小学校

道徳的判断力を高めるための指導過程の研究

常葉中学校

道徳的な心情を深め、内面化を図るための発問と話し合い活動の指導をどうすればよいか

(四)　研究の経過

1)　第一年次

授業研究を中心に行う(協同授業研究十三回)。実態調査の実施と道徳教育上の問題点のは握。全体計画・年間指導計画の改善(調査結果の活用)。

2)　第二年次

第一年次に明確にされた問題点を解明するため研究内容、方法等を再検討し、実証的研究の累積と深化に努める。協同授業研究五回。共通な分野についての共同研究、実践化へつながる場と方法の研究。

二、成果と反省

1)　包括的な一問多答法による発問をすることによって、児童生徒は多面的な考え方、感じ方をするようになってきた。

2)　話し合いを児童生徒間にひろめ追求段階で意見を対立させ、共感、同調、批判の理由をたたみかけるよりに追求し、価値かっ藤させることによって思考をねりあげることができた。

3)　終末の段階で児童生徒の能力や環境を考えた発問をすることにより自分の生活を反省し、意欲をもって実践しようとする様子がみられるようになった。

4)　児童生徒のよい面をみつけ、とりあげてやるよう常に配慮してきたため、実践意欲が高まってきた。

教師相互の研修によって道徳教育に対する関心が高まり、授業の進め方にも大きな進歩がみられ、父母の道徳への関心も高まりつつある。

5)　仮説にもとづいた授業研究については、更に充実させる必要がある。

6)　は握された道徳的価値を他に適応できる価値としてとらえさせ、事後の生活に生かすくふうが必要である。

7)　学校での指導が家庭や地域でも生かされるような方策が必要である。

(県中教育事務所指導主事　丹治勇)

　

発表・話し合いが見直しされている