教育福島0020号(1977年(S52)04月)-044page

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福島の文化財

県指定重要文化財

椿彫木彩漆笈(一背)

安達郡東和町大学戸沢字月夜畑 最勝寺

 

最勝寺の椿彫木彩漆笈一背

 

最勝寺の椿彫木彩漆笈一背

 

椿彫本彩漆笈盆(つばきぼくさいしつおい)(一背(いっぱい))は、総高八十八センチメートル、幅上端六十一センチメートル、同下端七十・五センチメートル、脚の開き七十四センチメートル、奥行上端四十三センチメートル、同下端四十四・五センチメートル、三段造りの三脚箱笈である。材質はカツラと推定される。内部は三段に区画され棚板一枚を失っているが、 一段ごとに二枚の開戸が設けられ、中央に扉支木(ひしき)がある。

扉の面には鎌倉彫(木地に図様を薄肉彫にし、漆色を塗り分けて仕上げた漆芸の技法)の花椿(つばき)を一面に彫って、朱彩の花、黒漆の枝葉を表し、花蕊(しん)に金箔(ぱく)を押している。葉全面には銅鋲が打たれ、左右の羽目板(はめいた)に菊、蓮(はす)などを彫り、三ツ巴(ともえ)文と三角文の彫りがある。下段にアヤメ状の草花と三角刻み文があり、扉支木にも同様の図柄が表現されており、完形な姿の笈である。

同種鎌倉彫の笈は、神奈川県博物館など東日本に伝来されており、本県では国指定の熱塩加納村の示現寺蔵、会津坂下町高久氏蔵があり、巴文及び側板仕上りヤリカンナ手法から室町期と推定されるが、本笈もこれらに比して劣るものではない。

なお、月光山光照院最勝寺は、応永三十年(一四二三年)草創の古刹(さつ)と伝えられ、初め曹洞宗、現在は天台宗である。

 

 

 


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