教育福島0023号(1977年(S52)08月)-020page

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進路指導中央講座に参加して

県立相馬女子高校・斎藤洸旦

県立田村高校・境野周一

 

「進路指導に必要な専門的知識と技術を習得させ、進路指導の中核となる者としての資質の向上をはかり、もって進路指導の充実に資する」ことを目的とした、進路指導中央講座が、文部省主催・筑波大学の協力により、国立教育会館筑波分館において、六月二十日から二十五日までの六日間開催された。

今回は、第十七回目であるが、初の宿泊研修とのこと。なお、受講者は、北海道・東北・関東・中部地区の中学校五十三名、高校三十一名、計八十四名が参加した。

 

大自然の中の豊かな教育環境

筑波学園都市は、土浦から、バスで約二十分の場所にある。初日、朝十時国鉄土浦駅前に集合し、バスの出迎えを受けた。学園都市のために新設された長い舗道を西に向かった。土浦をはずれると、視界は、緑一色の原野である。ちなみに、この都市は、北に筑波山を、南東に霞ケ浦を配する恵まれた自然環境の中に、総面積千四百八十九ヘクタールの広大な敷地を有している。その中を自動車道路とペデストリアン・ウェイなるものが走っている。大きな校合もビルも、まばらにしか見えない。筑波大学・国土地理院・建築研究所、その一角に、目的地の国立教育会館が、静かなたたずまいを見せていた。研修棟・図書館・体育館・食堂などが、ゆったりとした場所に、完全にも近い設備施設をもって建てられている。

 

斡旋指導から進路指導の理念確立へ

まず、最初の講義は、我々の進路指導の眼を開かせるにじゅうぶんな、熱のこもった水谷統夫先生(方教大)の話であった。先生は、昭和二十一年から四十五年まで、文部省で、進路指導に取り組まれ、いわば日本の進路指導育ての親である。

開口一番、「進路指導は、生徒自ら、将来の進路を選択し、将来の生活において、自己実現が出来るように、指導援助するという、学校の本質的な教育活動である。そして、それは、最高の自己形成であり、個人の能力やエネルギーの最高の発揮である」と。

今まで、いろいろの理由をつけながら、進学希望者の大学配置、就職斡旋にふりまわされてきた我々には、実に耳の痛い言葉であった。今回の講座はこの進路指導の理念の確立ということの、確認から始まった。

講義が進行するにつれて、この念を強くし、HRでの進路指導も、結局、職業観の育成、進路意識の向上、更には、人間としての生き方(自己実現)という点に目標を置かない限り、現代のような教育の偏向が生じる。我々も「鹿を追う者は山を見ず」の類で、ついつい、これを見逃しがちであったと思われる。

次に、進路情報の整備・活用についても、大学や会社へのより分けだけのものではなく、生徒の将来の生き方、将来の自分がどんな方向に成長して行くのか、具体的なイメージを作り上げるような情報を与えなければならない。それが、人間教育の方向であり、生き方の方向であることは、言を要しない。その方向、つまり、進路指導の理念の確認こそが、現在行われている受験指導偏重(人間教育を忘れた)を、是正して行くことになるのではないかと考えられる。

この講座は、そういう確かな教育の視点をすえるところから、始まったともいえよう。

 

業者テストの不都合性

続いて、教科調査官の水戸谷貞夫先生の「進路指導の課題」という話であった。それは、多岐にわたる話であったが、要点の二三を書きのべる。

業者テストの偏差値の問題が、マスコミをにぎわしているが、生徒の適性・能力を伸ばし、判定し、指導して行くのが教師であるべきなのに、部外者のテストで判定等をするのは、教育の冒とくではないか。それも、授業時間の中で、報酬を得ての行為は、社会の疑惑を受けるのは当然--とのこと。進路指導の理念から考えても、業者テストが、大学へのふり分けのみに使用されて、本人の適性や能力にかかわりなく行われるとしたら、やはり、誤った方向であると思う。

 

学歴偏重は時代遅れ

更に、話は、学歴問題にも触れた。いろんな統計によると、将来は、学卒と高卒の給料格差は、ちぢまるとのこと。また、学卒が将来、幹部・管理層に入ることの困難さを強調し、我々の使命は、学歴の幻影にまどわされることなく、今こそ、教育の本来あるべき姿に、軌道修正して行くことであるという。この方向づけにも、進路指導の理念の確認が必要となる。

 

高校のかかえている問題

中学での進路選択が、高校普通科に持ち込されるという現象が起きている。結局、本格的な進路指導は、高校から始まることになる。そのため、高校での進路指導は、中学の制限された状態のそれでなく、間口の広さが要求されて来ているといえる。

職業高校の場合には、不適応生徒の存在が目立っている。つまり、第一志望ではない--希望の無視による犠牲

 

 

 


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