教育福島0023号(1977年(S52)08月)-041page

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やさしい教育法令解説

 

教職員の営利企業等の従事について

 

一、はじめに

文部省が昨年度実施した「児童生徒の学校外学習活動に関する実態調査」は、現職の教員がいわゆる塾や家庭教師等のアルバイトをしていることを報告しています。各種マスコミでもこの実態についてその是非を種々論じました。中には、現職の校長が家庭教師を無断で行っていたため、分限処分として教諭に降格された事例も見受けられました。そこで今回は、教職員の営利企業等の従事について、その制度的なしくみについて説明したいと思います。

二、営利企業等の従事制限

公務員は、任命権者の許可なしに営利企業等に従事することが禁止されています。すなわち、地方公務員法第三十八条は、(一)営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ねること、(二)自ら営利を目的とする私企業を営むこと、(三)報酬を得て何らかの事業若しくは事務に従事することを禁止する旨規定しております。また、職員が営利企業等に従事する場合には、任命権者(県費負担教職員にあっては市町村教育委員会)の許可を得る必要があります。任命権者としては、当該営利企業等に従事することが職務に専念することに支障を来たすおそれがないか、公正な職務の執行に支障を来たすおそれがないか等を判断して許可するかどうか決定することになります。(営利企業等の従事制限に関する規則(以下「規則」という。)なお、本条の規定は、勤務時間の内外を問わず適用されます。

三、教育公務員の場合の特例

教員については営利企業等の従事に関し特例が認められています。すなわち教育公務員特例法第二十一条は、教育公務員は教育に関する他の職を兼ね又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け又は受けないでその職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる旨規定しています。このような特例を設けた趣旨は教員の勤務の特殊性にかんがみ、授業以外において兼職しても事務の遂行に支障を生じない余裕があること、教育に関する兼職、兼業は、本来の職務に熟達することにもなり、研修の一種と見うること、専門によっては適格者を得られず兼職を必要とする場合があること等によると考えられます。

ところで教育に関する職とは、学校教育、社会教育、学術文化に関する他の職員の職をいいます。また教育に関する他の事業若しくは事務の範囲については、文部省が人事院と協議して国立学校の教員に関して示した基準が参考になります。(以下「基準」という。なお、教職員の服務及び勤務第二次改訂版七十一ページ参照。)

四、事例について

(一)予備校や塾の講師になる場合

これらが学校教育法上の認可を受けた各種学校であれば、教育に関する他の事務にあたり、教育公務員特例法第二十一条の適用があります。その他の場合は地方公務員法第三十八条の問題となり、報酬を得る場合には、規則第三条の許可基準に基づく任命権者の許可が必要になります。

(二)家庭教師や塾の経営をする場合

この場合は、教育に関する他の事業にあたらないと解されており、したがって地方公務員法第三十八条の適用の問題になります。勤務時間外に報酬を得て数人の者を教える家庭教師のような場合には、それが進学を目的とするものであれば問題があると思われます。勿論ケースによっては報酬にあたるかどうか困難な問題があると思います。

次に、塾の経営の場合、それが営利事業と目されるものである限り、地方公務員法第三十八条の適用の問題となります。任命権者としては、教員が公教育以外の場で学校教育で教えるべき内容を教えていることは、許可基準に抵触するおそれがあるとして不許可にすることになると思われます。

(三)私立学校の講師になる場合

この場合は、教育公務員特例法の立法趣旨にも合致し、また教育に関する他の事務にあたると解されるので、任命権者としては本務の遂行に支障がないかどうか、給与を受けてよいかを認定する必要があります。

(四)附属機関の構成員等特別職に従事する場合

教育委員会が所掌するところの審査・審議又は調査等を行う附属機関(地方自治法第二百二条の三)の委員等の職務に従事する場合は、教育公務員特例法第二十一条の適用があり、給与を受けることも可能です。

 

 

 


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