教育福島0023号(1977年(S52)08月)-044page

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福島の文化財

 

県指定重要無形民俗文化財

金沢の羽山ごもり

福島市松川町字宮前43 羽山ごもり保存会

 

福島市松川町金沢の羽山ごもり

 

福島市松川町金沢の羽山ごもり

 

福島市松川町金沢(かなざわ)の羽山(はやま)ごもりは、毎年旧暦十一月十六日から三日間(昔は十二日から七日間)行われる。氏子の男子数十名が里宮の黒沼神社行屋にこもり、厳重な物忌み生活に入る。朝夕水垢離(ごり)をとり、火を別にし、となえごとを唱し、忌み言葉を用い、共同飲食をくり返す。この間、防寒具を用いず夜は仮睡するだけである。また、餅つきの歌をうたいながら餅をつき、小宮参りを行う。十六日の田遊びは、炉の周辺で農耕の模擬所作を行い、神前で田植歌を唱和する。

十八日午前三時ころ、お光(ひかり)り木(ぼく)を先頭に幣束を奉じて羽山岳頂上に至り、大篝火(かがりび)を焚(た)き、先達の介添えにより神を降ろし、のりわらによる託宣が行われる。託宣の中心は作占いで、村の翌年の五穀の豊凶、天候にはじまり、村人の災害疾病その他に及ぶ。鶏鳴時、祭りを終え、塩で山を清めながら下山一同行屋で直会(なおらい)を行い精進を解く。

羽山は阿武隅山系にひろく分布しているが、当羽山ごもりは、山そのものが神体山として普段の登拝を戒め、潔斎は厳しく、服装・役割・共食の作法も古く、また田遊びの神事は芸能化される以前の素朴さをとどめ、特に神おろしに続く託宣は、県下では当社以外には殆んど見られなくなった。

要するに田遊びの祖形を見ることが出来るほか、よくわが国古来の典型的な祭のたいせつな部分を残しているので文化財としての価値が高い。

 

 

 


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