教育福島0024号(1977年(S52)09月)-041page
やさしい教育法令解説
有給休暇について(1)
一、休暇の意義と種類
一般に休暇とは、職員がその所属長の承認を得て、一定の期間にその職務を遂行しないで、自発的又はやむを得ず、職務以外の事がらに勤務時間を利用することが、条例、規則上認められたものです。
休暇制度が採用されたのは、休暇の種類によって多少の差異があるにしても、職員が人間として価植ある生活を営む必要をみたすべきものであるという基本理念に立脚し、そのため時間的余裕を保障しようとするところにあります。
労基法では、労働条件の最低保障基準として休暇を規定していますが、教職員にあっては、これを上まわる範囲の休暇が条例、規則で定められています。
本県の「職員の休日及び有給休暇に関する条例」では、一、年次休暇、二父母の祭日、三、療養休暇、四、人事委員会規則で定めるものを有給休暇としております。
人事委員会規則で定める休暇には、(1) 疾病傷害のための休暇、(2) 出産のための休暇、(3) つわりのための休暇、(4) 生理のための休暇、(5) 配偶者、父母等の忌引休暇、(6) 結婚のための休暇、(7) 配偶者及び子の祭日のための休暇があります。
有給休暇の効果としては、勤務時間中でありながら、職務専念義務が免除され、勤務しないにもかかわらず、その間の給料支給が保障されます。
二、年次休暇
教職員が心身の疲労を回復させ、その労働力の維持培養を図るため、勤務を要しない日以外に年間一定日数の休みを教職員の希望する時季に与え、かつその実効を期するために有給とする休暇をいいます。
地方公務員である教職員については職員の休日及び有給休暇に関する条例により、正式採用された場合には、採用された月に関係なく年に二十日間の年次休暇を保障しています。
年次休暇が当該暦年内に取りきれなかった場合には、勤続年数に応じて最低六日から最高二十日まで、翌年にかぎり繰り越すことができますが、前年において年間の全勤務日の日数のうち勤務した日数が八割未満である場合には繰り越すことができません。
また、期限付採用の教職員の年次休暇の付与日数については、てい減方式で計算された日数を付与しており、採用月数一か月の二日から、十二か月の二十日までとなっています。(教職員の服務及び勤務一二九頁参照)
年次休暇を受けようとするときは、あらかじめ所属長に届け出なければなりません。この場合に、所属長がその年次休暇が、業務の正常な運営を妨げると認めるときは、他の時季にこれを変更させることができますが、所属長の時季変更権が行使されない限り、届けにより休暇の効力が発生することになります。
さきにも述べたように、年次休暇の制度は労働者に休養を与え、労働力の維持培養を図ることを目的とするもので、あくまで労使の正常な体制を前提とするものであり、争議行為の手段として使用することは、休暇制度の趣旨に反するものです。このことについて最高裁四八・三・二判決は、「休暇の利用目的に関連して、いわゆる一斉休暇の場合を論ずるが、いわゆる一斉休暇闘争とは、これを労働者がその所属する事業場において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して職場を放棄、離脱するものと解するときはその実質は年次休暇に名を籍(か)りて、その形式いかんを問わず、本来の年次休暇権の行使ではないのであるから、これに対する使用者の時季変更権の行使もありえず、一斉休暇の名の下に同盟罷業に入った労働者の全部について、賃金請求権が発生しないことになる。」として年次休暇をいっせい休暇闘争に利用することは、労基法上の正当な有給休暇として扱うことはできないと判示しています。
労基法--労働基準法